映画:「ベルリン・天使の詩」 / 天使視点の映像 / おっちゃんの姿をした天使

amazon ASIN-B000EGDDLI ドイツ人監督ヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」(1987/独=仏)を観た。
世界には人間の目に見えない天使たちが存在し、彼らは人に寄り添ってその悩みを聴き、共に悩んだり悲しみ、孤独や絶望に打ちひしがれている人々を人知れず力づけ癒し続けて来た。
ベルリンの町で人間の長い歴史を見続け、人々を励まし続けてきたそんな天使の一人は、サーカスの空中ブランコ乗りの少女に恋し、肉体を持って彼女を愛したいがために、人間として生きることを望むようになる。
ドイツ語の原題は「Der Himmel über Berlin」(ベルリンの上の天国?)、英題は「Wings of Desire」(欲望の翼)と、原題、英題、邦題のどれもいい感じである。
魂だけの存在であるおっちゃんの姿をした天使が、モノクロの世界の中で人々を励まし続ける様は物悲しくもあり、なんともいえない優しさにも溢れていた。
天使たちの存在、そして人間になろうとする主人公の天使、すべてが優しい文句なく良い映画であった。


天使の仕事は基本的に人の心の叫びに耳を傾けて慰めることであるらしく、地下鉄の中、家の中、ビルの屋上、どこにであろうが孤独や悲しみや絶望に悩む人があれば話を聞いて慰めている。
彼らが図書館に集まって自分の聴いた悩みや悲しみを発表しあったりしている様が良かった。
ビルから飛び降りようとする男に寄り添い励ますも男は飛び降り、天使が頭を抱えて叫ぶシーンもあったので、励ましに失敗することもあるようである。
永遠の命を生きる天使なので数え切れない励ましを行ってきたと想像されるけど、仕事に慣れきらず、現在も励ましが成功すると喜び、失敗すると悲しむ新鮮なモチベーションをもって仕事を続けているのはとても素晴らしい。
天使といえば一般的には子供だったり女性だったり優男風だったりするような、無垢な優しさをもつ存在としてイメージされるけど、この映画の天使たちはその辺のおっちゃんのような姿であった。
でもこの映画を観ていると、天使なる存在はおっちゃん姿でしかありえないように思えてくるのが不思議である。おっちゃんが天使的な属性を持っているとはちょっとした驚きである。
タルコフスキーの「ストーカー」、ディズニーの「オズの魔法使い」などカラーとモノクロの切り替わりが印象的な作品があったけど、この映画もモノクロとカラーの切り替わりがとても印象的だった。
今までモノクロの世界で暮らしてきた天使が、人間になってカラーの世界の美しさを褒め称える様はとても良かった。
天使の視点なる映像がちょっと新鮮で、映画全体になんともいえない優しい雰囲気が満ちている良い映画であった。

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