ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』

amazon ASIN-4150103453先日『世界の中心で愛を叫んだけもの』を読んでSFが読みたくなったので、SFの名作に必ず名があがってくるロバート・A・ハインラインの『夏への扉』を読んだ。
1957年に出版されたこの本は、ガンダムのモビルスーツの概念の原型で、スターシップ・トゥルーパーズの原作であるハードなイメージのあるSF『宇宙の戦士』を書いた作者の柔らかい目の物語であり、「猫SF」や「猫小説」の代表作でもあるらしい。
友人や恋人に裏切られて失意の底にあったエンジニアで発明家の主人公は、莫大な費用を払って未来に目覚めるべくコールドスリープに入いろうとする。
という感じで物語が始まる。


1957年当時、あまり一般的では無かったようなタイムパラドックスやコールドスリープ、家事ロボットのロジックとその記憶媒体などの概念は、それだけで本の面白さにとって大きな要素だったと思われる。
今となってはSFでなくても当たり前のように本や漫画や映画やゲームに出てくる概念が、陳腐化したり古臭く感じないというだけで凄いのかもしれないが、そういった概念や小道具が新鮮に感じられない分、物語としてはSFの範疇に入るライトノベルのような印象を受けた。
SF入門書というよりも、いったん読み出せばストーリーと展開でどんどん読者をドライブしてゆくような、中高生向けの本読みの楽しさを覚えるための「本読み入門」という感じであろうか。
1957年当時のこの本の中での現在である1970年、そして未来である2001年が、過去となってしまった今から見ても余りにも輝かしい未来に見える。
出てくる人も良い人ばかりでこの年のひねくれたオッサンにはちょっと眩し過ぎた。
ユートピア的な未来像を持ったSFの代表ということでいいのだろうか。
というよりも、なぜSFといえばハードなものだと思い込んでいたのだろうと不思議に思った。

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