コバンザメ日和

別に仕事が嫌なわけでも、それほどに家が恋しいわけでもないのだが、仕事が終わって自転車に乗って体に風を感じていると、本当に「ほっ」とする。
しかしながらこの日は「ほっ」とか言っている余裕もないくらいに寒かった。
いつもは自転車を漕いで体が温まったくらいでちょうど良いくらいの「薄着め」なのだが、この日はとうてい寒さに見合った服ではなく、漕いでも体が温まる前に、スピードが出た分余計にあたる風の冷たさに耐えられない。
かといってゆっくり走ったところで体は冷えてゆく一方で、「ゆっくり」を楽しむほどの余裕もない。
しまいには雪まで降ってきて寒いというよりは痛い。


そういうわけで、中途半端なスピードで前を走る、風よけに適した幅のマダムが操縦するママチャリの後ろにぴったり張り付く。
こうなると、前をゆくマダムが吹き付ける雪と風をすべてブロックしてくれるので遙かに楽。
当然ながら先頭交代もなく、体を低くしてマダムの数十センチ後ろを無音でひた走る。
しかしながらそのマダムと俺の家は違う場所にあるわけで、俺が曲がらないと家に帰れない角をマダムは真っ直ぐ行ってしまった。
いくら快適だとは言え、さすがについて行くわけにも行かないので角を曲がり、視界に入った中で、一番風よけに適した自転車を見つけると、またすぐにぴったり後ろにつける。
その自転車がどこかの角で曲がると、また次の風よけを探し、後ろに張り付く。
そんな事を繰り返し、コバンザメのごとく風よけを転々としながら家まで帰ってきた。
そうでもしないととても家に帰れないくらいに寒い、コバンザメ日和の夜だった。

2件のコメント

  • ありがとうござります。健康第一で頑張って参ります。
    でも良い子のまことさんは、いくら寒くても二輪時に「コバンザメ」を真似しちゃいけませんよ!

  • コバンザメな土偶さんの姿を想像して、思わず吹いてしまいました。(笑)
    昨日は本当に寒かった・・・風邪(風?)に気をつけて帰ってくださいねぇ~。

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