G.パスカル ザカリー『闘うプログラマー』

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ビル・ゲイツの野望を実現するために、マイクロソフトに「伝説のプログラマー」が引き抜かれた。デビッド・カトラー。屈強な肉体と軍隊顔負けの厳しい職業理念をもつ、闘争心のかたまりのような男だ。そして、彼を追って移籍した腹心の部下たち。新プロジェクトを担う外人部隊が秘密裏に結成された。自由闊達なマイクロソフトの「キャンパス」内で、異分子たちによる空前のパソコンOS開発作戦「NT」の幕が切って落とされた…。
と紹介されている。
今から20年前程の話を発端とし、結果的に五年がかりのプロジェクトとなったWindowsNT開発に関するノンフィクションで、「コンピューター書の古典」みたいな扱いを受けてる本。
上下刊合わせて500ページほど。アメリカ日本とも初版は1994年に出ている。
原題の『SHOWSTOPPER!』は、「致命的なバグの出現」と言う意味の業界用語で、邦題とは少しニュアンスが違う。邦題の『闘うプログラマー』はデビッド・カトラーやその率いるチームのいわば人間側に視点を置き、原題は彼らの陥った悲惨な状態に視点を置いているような気がする。
この辺は「物語」の扱いの文化の差かなと思う。当然、日本人の俺は、登場する人物に感情移入して読んだため、結構しんどかった。
以降の感想は、先日読んだリーナス・トーバルスとデビッド・カトラーをリーダーとして比較する文脈で書いてみたい。
かと言って、頭の悪い勘違い腐れビジネスマンが言うような「リーダ論」なんかを述べるつもりはさらさら無いのでご安心あれ。


amazon ASIN-4822740161先日読んだ『ぼくにはそれが楽しかったから』のリーナス・トーバルスの、どちらかと言えば「オタク系」のスタンスとは違い、デビッド・カトラーのプログラミングに対する姿勢はどちらかと言えば「軍人系」になると思う。全ての時間を仕事に使い、部下にも当然のごとくそれを要求して、軍人らしくデスマーチの先頭を歩いてゆく。
両者の性格も本やニュースやインタビュー記事を読んだりする限りでは全く違うように見える。
軍人系とオタク系、お互い相容れない様に見えるけど、リーダーとして巨大プロジェクトを率いていく才覚と、部下を掌握するカリスマ性に関しては、どちらも突出した物を持っているのは間違いない。
カトラーはDECでVMS、MSでWindowsNTを開発する巨大プロジェクトを率い、リーナスはLinuxカーネル開発プロジェクトを率いている。
リーナスは巨大プロジェクトを統率するコツは「統率しようとしない事。みんなに全部任せる事」と言うような事を言っている。
同じようにプロジェクトを率いていても、カトラーとリーナスでは全く別の事に主眼をおいていると言う事になる。
全く違う二人に、プロジェクトに対しての関わり方に共通点があるとすれば、まず、自らが先頭に立つような現場主義である事。そして自らがプロジェクト内でも随一のプログラマーである事。そして最後に自分はリーダーなんかになりたくないと思っている事。
カトラーもリーナスも率先してコードを書くし、そのコードはみんなが惚れ惚れするようなものだという。
ようはやり方なんかどうでも良くって、自ら先頭にありそのプロジェクトの分野で第一人者であれば、勝手にリーダーになってて、あとは勝手についてくるという事なんやろうね。
いずれにせよそういう人は極めて希である事はよくわかる。そういう上司なり、リーダーに巡り会う事も一つの幸せであるんやろうと俺は思う。今の俺ならどっちでも喜んでついて行くぞ。(チームに入れてくれるかどうかは別にして…)
一人で立ち上げて一人で行進するようなプロジェクトでは、実際ちょっとしんどいし何よりも空しい。モチベーションも保ちにくいしね。(そもそもそれはプロジェクトなのか?)
一人で行動する殺し屋といえば聞こえは良いけど、ちょっと裏返せばただの鉄砲玉。
部隊長のリーダーについて組織戦闘する方が遙かに楽というのはあるわな。
まぁ、カトラーとリーナスって、なんというかラオウとケンシロウの違いみたいなもん?
どっちも中々おらんわなぁ。たしかに。
カトラーは現在60歳くらいで、驚く事にまだ現役のプログラマーであるという。
何でもWindowsXPの64ビットカーネルの開発に関わり、現在も次期windowsの開発チームにいるらしい。
曾孫の代まで遊んで暮らせるほどの金を持ってるはずなのに、まだコード書いてるとは…まさしく戦闘マシーンやね。
あと、ビル・ゲイツを中立的に書いてあるのがちょっと好感持った。大体ゲイツって悪の帝国の総統チックな描き方されるもんな。カイオウみたいに…
それから最後に一つ判った事は、俺は何でも「北斗の拳」に置き換えて物事を見る癖があるようだ…
熱中度     ★★★★☆
考えさせられ度 ★★☆☆☆
影響度     ★★☆☆☆
総合      ★★★☆☆

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