高野文子『棒がいっぽん』 / 「表現」のたどりつく一つの極

amazon ASIN-4838706138 最近同じ職場の某氏に色々と漫画を借りて読んでいるのだが、衝撃的だったものを一つ。高野文子の『棒がいっぽん』である。
この漫画は色々なところに発表された短編を集めたもので、ストーリー漫画性は全くといって良いほど無い短編集なのであるが、これを読んで漫画を含む「表現」というものでここまでのことが出来るのかととてつもなく驚いた本である。
この『棒がいっぽん』の中ではネット上で評判を見るに「奥村さんのお茄子」がダントツに評判が良いようだが、私にとっては「美しき町」と「私の知ってるあの子のこと」が衝撃的に素晴らしかった。
大恋愛や激しい欲求とは程遠い、お見合い結婚をして時に他人に振り回されながらも淡々と静かに平和に穏やかに同じ価値を共有して暮らす二人の夫婦の揺ぎ無い幸せを描く「美しき町」、何の問題も無い幸せな家庭に育つ少女の、問題児というマイノリティーへの憧れと、そのマイノリティーを少し理解する瞬間の心の揺れを描く「私の知ってるあの子のこと」、どちらも余りにも微妙でしかも美しい非言語領域を見事に表現していて素晴らしい。


余りにも素晴らしくて高野文子なる人物に心底から敬服したので、彼女の名による単行本をすべて買い集めてしまったくらいである。
この高野文子の本の中ではこの『棒がいっぽん』が一番素晴らしかったけど、その他の本もなかなか良かったのでまた紹介したいと思う。



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