試されてるのはむしろ私

巨大スーパーでお腹が一杯になるくらい試食をした。
チーズから始まり、ハンバーグや各種ソーセジ、色々な炒め物からサラダにカレーライス、そしてデザートにデコポンまでと、まるでコースのようで、食品売り場を歩いているだけでもうお腹一杯になった。
色々なものが試食として配られているが、試食を配っている人もまた様々である。若い女の子から年配の女性、妙に横柄で食べたら絶対買え!と言わんばかりに噛み付かんばかりに食いついてくる人から、人と目を合わさず虚空に向かっていかに自分の配る食べ物がお得で栄養があるかをお題目のごとくブツブツと語る人、もう試食コーナーで食べ物を配るために生まれてきたような人から、絶対この仕事向いていないと思えるような人まで色々である。
一般的に、特定の仕事についている人というのは、なんとなくそれなりの「タイプ」に収まるように思えるのだが、この試食を配っている人については本当に色々なタイプの人がいるように思う。
色々な人が色々な試食を配っている様を見ていると、この人がどういう運命をたどって試食を配るようになったのかがとても興味が沸いてくる。
配られている食べ物よりも、配っている人そのものの方に興味が引かれてくるのである。


かと言って「貴方の配っている食べ物よりも、貴方自身に興味があります。貴方の事を教えてください。」などと話しかければ、韓流ドラマか1940年代ハリウッド映画の観すぎだと思われそうである。下手すれば警備員を呼ばれるだろう。
そうなれば私は「ちがう!ちがう!ナンパやないー!純粋に興味本位で聞いただけやってー!」と言いながら警備員に引っ張られて行く事になるに違いない。
言葉としては単純な興味本位の疑問を発したつもりだけなのだが、いざそれが音となって人に伝わると、言葉自体に含まれている意味は消えて、ハンフリー・ボガード的「君の瞳に乾杯」的なセリフと大して変わらないように受け取られるだろう。
という事で、「試食バイト」についてちょっとネットで調べてみた。
調べる前は身一つでお店に行って、支給された食べ物なり飲み物を配るのだと思ってたのだが実態は全く違った。
実際は配る物を自分で買い取ったり、エプロンやテーブルクロスは当たり前として、トレーや爪楊枝を自前で用意したり、中にはホットプレートまで持参する人もいるようで、これは結構驚いた。
いやもう世界は広いなぁと。世界は上や横にだけ広がっているのではなく、中や内側にもどこまでも広がっているように思えてくるのであった。
背後世界は何処まで広いのかとクラクラするのであった。



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