ムカデと開戦/悪意なき戦争/ムカデになりた~い

先日生まれて初めてムカデに咬まれた。
状況としては、寝ていて右手の親指の付け根にチクッととげが刺さったような痛みを感じて目を覚ましたのだが、起きて蛍光灯で手を見ても何も刺さっているように思えない。
寝ぼけながらも「???」と思っていると布団の横を体長10センチほどのトビズムカデがにょろにょろ。
「バグ共を殺せ!!」(スターシップ・トゥルーパーズ風に)ということで、とりあえず枕元にあったルービックキューブを掴んで頭部を叩き潰す。死んではいないものの体の前四分の一を潰されてまともに歩けずウネウネ苦しんでいるムカデ君をハガキに載せて流し台まで運んでバーナーで炙る。
「バグ共め!!思い知ったか!!」(スターシップ・トゥルーパーズ風に)
とりあえず私を咬んだムカデはやっつけたものの、咬まれた箇所はだんだん痛くなってくる。
咬まれた部分を観察しているとだんだん水ぶくれが出来てきて、それが時間を経つにつれて大きり、ズキズキとした痛みも強くなってくる。
患部を観察しながらも、とりあえずネットでどうすればいいのか調べてみた。
「毒は酸性なのでアルカリで中和する」「抗ヒスタミン剤を塗る」「アナフィラキシーショックに注意」「とりあえず病院」「毒を搾り出す」などとやたらと情報が錯綜していて笑えた。
咬まれた人のパニックとトラウマの度合いと怯え加減が伝わってくるようであった。
とりあえず、毒を出して、アルカリ+お湯で毒素を破壊という方策を立て、毒を搾り出そうと咬まれた部分の周りをつまもうとしたが、痛くてつまめない。
洗面所に行って30分ほど口をゆすぎながら思いっきり毒を吸い出し続け、合間に熱いお湯を患部にかけ、石鹸を塗りこんでいたら痛みは引いた。後はムヒを塗って寝てしまった。
咬まれたムカデが小さかったからか、毒の量が少なかったからか、体質的なものか、処置が良かったのか分からないけどとにかくひどいことにならずにすぐに直った。
ネットで見る限り、パンパンに腫れて一週間は痛みが取れないと聞いていたのだが、私の場合は一晩寝たら治っていた。


ムカデの毒はの酸性の酵素系の毒であり、タンパク質分解酵素として触れている部分に対して効いてくるタイプの毒であるらしい。つまりは皮下に入ってタンパク質を溶かし、その他の酵素系の物質の働きによって炎症を起こして痛みと腫れが出るのである。
そしてこのムカデの毒である酵素は触媒として働くので、これが皮下にあれば毒素は減じることなくずっと周辺のタンパク質を分解し続けるのだろう。
この毒素がある限り付近の触媒反応は止まらないので、毒の効果を消すには、とにかくこの酵素を体外に出すか、壊すか非活性化する必要があるということになる。
酵素は高分子のタンパク質なので熱に弱く、ムカデの毒は強酸性なのでアルカリで中和されると反応が変わるので、熱いお湯で毒の酵素を壊し、石鹸のアルカリで中和し、同時進行で毒を吸い出すというのが方針として成り立つのだろう。
しかし、一般的には蛇に咬まれたりサソリに刺されたりした場合に口で毒を吸い出すのは実は危険な行為で、医学的にはやってはならない行為の一つであるらしい。
それでも、今回に関してはこれが一番良かったのではないかと思う。
毒の量も少ないし、吸い出して直ぐに吐き出して、口をゆすいで再び吸い出すということをしていれば、口内の粘膜が毒にやられることも少なかろう。それに石鹸のついた手を吸っていれば口の中も自然と石鹸だらけになるので、毒が口内に入った時点で無毒化されているに違いない。
そして口で傷口を吸うことによって逆に傷口に雑菌が入るというリスクは、石鹸で洗ったりすることで軽減されているようにも思う。
ただし、蜂やムカデの毒が酸性でアルカリによって中和されるというのは迷信だという情報もあった。
で、私なりにムカデに咬まれた時の対策をまとめると、
1、咬まれたムカデを倒す
2、洗面所に行く
3、咬まれた部分を思いっきり吸って毒を吸い出す。
4、毒を吐き出して口をゆすぐ、
5、熱いお湯で咬まれた箇所を流す、
6、石鹸を咬まれた箇所に塗り込んで洗う
7、3-6を気が向く限り、数十回は繰り返す。
8、いわゆる「抗ヒスタミン剤入り軟膏」つまりは一般的な虫刺されの薬を塗って終了。
ということになるであろうか。
そしてムカデの毒は蜂の毒と同じように、二度目以降に咬まれた場合は一度目に咬まれた時に体内に出来る抗体が過剰反応してショック状態を引き起こす「アナフィラキシーショック」の可能性があるらしい。
咬まれて三十分以上胸がどきどきしたり吐き気や頭痛などのショック症状が収まらないようであれば病院に行く方がいいらしい。
体内に入った毒がただ皮下にとどまらず、血管から血流に乗って体内を駆け巡ればそんなショック症状も起こりそうである。
そして名前は良く聴くものの具体的にどの薬か良くわからない「抗ヒスタミン剤入り軟膏」とは、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンなどが入っている一般的な虫刺されの薬であるようだ。
今まで過去にムカデに咬まれたことのある人に、ムカデに咬まれると無茶苦茶痛いと聞かされていたのだが、確かにこれは痛かった。
カラマーゾフの兄弟の長男ドミートリーがムカデに咬まれて二週間寝込んだというエピソードがあったが確かにそれもうなづける。
過去に私はミツバチ、アシナガバチ、クマバチ、マルハナバチ辺りに刺された事があるのだが、痛さで言うとアシナガバチにさされた時くらいの痛さかな?
私は虫好きなので、基本的にムカデも好きである。野外で巨大なムカデが歩いてるのを見ると惚れ惚れして見入ってしまうくらいである。
なのでムカデ君も家の中でゴキブリなどを食べてくれるだけなら良いのだが、流石に咬まれるのはたまらない。
ムカデ君も何も私を食べたりやっつけようと思って咬み付いたわけではなく、お散歩していたら何かの拍子に自分の体に触れられて思わず咬み付いただけであろう。
ムカデ君も私もお互いに対して悪意なり敵意なり食物連鎖の関係があるわけではない。ムカデ君も私もどちらが悪いというわけではない。ただこういう状況で出会ってしまったばっかりに、敵同士になったということである。
どちらが悪いわけでもなくただ何かの巡り会わせでお互い敵同士になってしまうということは世の中には多々あるのである。。
そういう意味で人間に反撃しないアシダカグモが現れると喜んで観察しているのだが、ムカデ君が敵になってしまったのはちょっと残念である。
家の中と家の付近で見かけるムカデ君は敵と見なして射殺の後火あぶりである。「覚悟しろ!バグ共め!!」(スターシップ・トゥルーパーズ風に)
ムカデ君と私は、第一次世界大戦前のフランスとドイツのように、誰もが戦争など望んでいなかったのに状況に流されるまま、いつの間にか戦争へと流されてしまったのであった。
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などということを考えながら、岡崎京子のマンガを読んでいたら「ムカデ」という単語が出てきていて笑った。
私もやたらと靴ばかり買っている上に、つい先日もシーズンオフになってブーツが安くなったので思わず買ってしまったところなので、とても身につまされたのであった。

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