野村芳太郎「八つ墓村」(1977)/「祟りじゃ~っ」や「桜吹雪の殺人鬼」など、いとをかし

amazon ASIN-B000063EG1市川崑の「犬神家の一族」を観たので、引き続き横溝正史モノの「八つ墓村」を観た。
これもテレビでチラ見程度でちゃんと観た事は無かったので、三度映画化されているうちの一番有名な1977年の野村芳太郎監督のものをレンタル屋さんで借りてきた。
この映画も「犬神家の一族」同様に遺産や家の相続を巡る連続殺人事件を金田一耕介が推理する話であり、
原作は『犬神家の一族』同様推理小説であるが、この映画はその原作を大幅にアレンジして「祟りに見せかけた犯罪」を「本当の祟り」として描き、映画全体を純粋な恐怖映画として再構成している。
確かに金田一耕介は事件の謎を解いて犯人を割り出す探偵ではなく、起こってしまった事件の裏づけを取って、事件の裏事情を解説してみせるだけの役回りになっていたし、犯人すら祟りの一環として組み込まれていた小道具であり、誰が連続殺人事件の犯人であるかよりも、八つ墓の祟りがどうなるかの方がはるかに見所であった。
1976年の「八つ墓村」と1977年の「犬神家の一族」は微妙に混同されやすいが、映画の方向性としては大分違うのである。


「八つ墓村」といえば「祟りじゃ~っ!」の台詞であり、
この原作の元となった「津山30人殺傷事件」の犯人そのままに、頭に懐中電灯を挿し、猟銃のカートを満載したシェルホルダーをたすきがけにし、抜き身の日本刀を片手に夜桜の下を走る狂気の殺人鬼のイメージであろう。
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その映画のイメージ通り、村に入って最初に上の「祟りじゃ~っ!」の歓迎を受け、映画のラストシーンは祟り具合に大満足して高笑いする落武者の怨霊と、最初から最期まで土俗的なおどろおどろしいものだった。
「すけきよ」と「逆さ死体」の「犬神家の一族が」謎と事件の映画であったのに引き換え、
「祟りじゃ~っ」と「桜吹雪の殺人鬼」の「八つ墓村」は祟りと狂気の物語であった。
「すけきよ」と「逆さ死体」が「和の心」であると同様に、「祟りじゃ~っ」と「桜吹雪の殺人鬼」もいとをかし。ですな。

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