さまよえるサマリア人

なぜか早くに目が覚める。
音楽を聴きながら1日を過ごし、午後には昼寝までする。
自ずから何かをするでなく、耳に入ってくる音楽にのみひたすら心を傾け、沸いてくる感情やら思念が語る言葉にのみ耳を傾ける。
目に見える「反応」も「行動」も何も無き廃人のごとき惚けた1日なれども、このような時間を送れる事はありがたきかな。などと思う。


窓から見える満月が綺麗だ。
一流の音楽家が演奏する一流の音楽を聴きながら、俺もなにかしらで一流の人間になれたらどれだけ良いだろうかと思う。
普通では無いと言われるにしても、ただ普通でないだけではありたくない。
迷ってばかり、彷徨ってばかりではどこにもたどり着けない。
迷うほどに選択肢があるのか、彷徨うほどに道は広いのかと言うのは別にして、そもそも俺は何処を目指せばいいのかと思う。
amazon ASIN-B000000Y7PEric Dolphyのリーダーアルバム 「Eric Dolphy at the Five Spot, Vol1」を聞いた。
Eric DolphyとBooker Littleという若くして死んだ二人の演奏はとりあえず置いとくとして、一曲目、Fire WaltzでのMal Waldronのアドリブを聴くために俺はこのCDをかける。
寡黙すぎず饒舌すぎず、ただただ語りたい事だけを訥々と語る彼のピアノが、DolphyとLittleに刺激されて彼なりに弾ける様が何とも言えず素晴らしい。
羽目を外してなお上品さと羞恥心を忘れない人を見るのは何とも心地良いものだ。
amazon ASIN-B00008KKTCEric Dolphyの辞世のアルバムとなった「LAST DATE」をレコードで聴いた。
彼のバスクラリネットとフルートの音色に死の予兆を…などという人がいるけど、俺は全然そういう風に思わない。
いつものドルフィー節、いつもの「馬のいななき」、死の予感など微塵も感じない。
このアルバムを聴く度に死の訪れの突然さにただ驚くばかりで、いつ死んでも良いような生き方をしたいと切に願う。
迫り来る死を知る事もなく、彼の出す楽しげで自由奔放なバスクラの音が心地良く、孤高のフルートの音がどこか哀しい。

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