ボリス・ヴィアン 『日々の泡』

ボリス・ヴィアン 『日々の泡』を読んだ。
フランス人である著者のボリス・ヴィアンは39歳で死に、生前は作家と言うよりはジャズトランペッターや作詞家、歌手としての方が有名だったように、生前の彼の作品は誰にも見向きされなかったが、死後にコクトーやサルトルやボーヴォアールによって発掘されて人気と名誉が回復した。と言うことになるらしい。
この本のオリジナルは1947年にフランスで刊行され、今から36年前の1970年に日本語への翻訳の初版が出版と結構古い本である。
なんでも「うたかたの日々 」と言う名前で漫画化もされているらしい。
帯に”「20世紀の恋愛小説中もっとも悲痛な小説」と評される最高傑作”と書いてあったが、誰がそう評したのかは兎も角として、悲痛な恋愛小説であることは間違いなかった。
描かれる世界はシュールで耽美で何ともいえん世界で、本作のクライマックスとなる「悲痛」の原因である肺の中に睡蓮が咲くという奇病と遺体を物の様に扱う「貧乏人のとむらい」に処される主人公の美しい妻「クロエ」の運命も中々趣があってよろし。


amazon ASIN-4105005014  この本が気に入るか気に入らんかはこの作者の描く世界観が気に入るか気にいらんかだけにかかってくるやろう。ぶっちゃけストーリーはおまけのような物やと思う。
美しいのか醜いのか良く分らん世界やけど、現実も大して変わらんような気にもさせる現実との入り混じり具合が絶妙で、本の最後で自殺しようと猫に噛み殺してくれるよう頼み込んでいる二十日鼠がなんとも変なところにヒットした。
この本のまえがきに「かわいい少女たちとの恋愛、デューク・エリントンの音楽。他のものは消え失せたって良い、醜いんだから。」ってあまりに恥ずかしくてごっついことが書いてあるけど、表現と内容こそ違いはすれ誰でもそういう風な感覚は持ち合わせているわけで、誰の中にでもある普段は表に出てこないそういう風なところにぴったりはまる小説だと思った。
余りにも現実離れした世界とストーリーと描写に満ち溢れたこの本を、ガチガチの現実である家事の合間に読んだので余計にギャップが激しく、蛇口から鰻や鱒が出てくればどれだけ便利だろうかと思った。

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