深夜の散歩は特殊技能か?/第二の土偶

私の子供の頃によく見ていたアニメに「怪物くん」というのがあった。

怪物王国の王子様である「怪物くん」と、その「怪物くん」の護衛かつ執事のような三人組である狼男とフランケンシュタインとドラキュラと共になぜか地球のどこぞの城に住んでいて、毎度ドタバタ劇を繰り返すという感じのもので、感じのものもだったというくらいに内容はまったく覚えていないけど、そのエンディングの歌の一フレーズだけがずっと印象に残っている。

力仕事に~♪、深夜の散歩~♪怪物料理の名コック」とそれぞれフランケンシュタイン、ドラキュラ、狼男と怪物くんの三人の下僕がいかに主人の役に立つ特技を持っていて、いかに主人に尽くしているかというニュアンスで歌われていたのだが、力仕事と怪物料理の名コックは怪物君の役に立つ特技として認められるけど、深夜の散歩は特技として認められないなぁ。「パトロール」ならまだしも「散歩」てw遊んでるだけやんww猫かよwと子供ながらに思っていた。

確かにおっさんになった今考えても、バイトの面接に持参した履歴書の特技の欄に「モンスターハンター」とか書いて「これは趣味?ですね…」と突っ込まれる高校生のようにも思えるし、

怪物王国の要人警護担当官を決める面接で特殊技能を聞かれて「深夜の散歩です!キリッ!」と答えるような怪物が果たして最も重要な任務を与えられることがありうるか?とも思える。

今までずっと「深夜の散歩」は怪物王子を守るための特殊技能として成り立たないという前提で考えてきたけど、現にドラキュラ伯爵は怪物くんの護衛である。

最初から「深夜の散歩は特技ではない」という結論を前提にするのではなく、「怪物くんの下僕であるドラキュラの深夜の散歩は特殊技能である」 という現実をまず受け入れた上で、次に「なぜ”深夜の散歩”は怪物王子を守るための特殊技能となるのか?」と実存主義的に問うべきであったのだ。そう、「実存は本質に先立つ」のだ。

この「深夜の散歩~♪」というフレーズを夜に歩くと時々思い出すのだが、今日も月が綺麗だったので思わず散歩した私も「特技は深夜の賀茂川散歩です!」と胸を張って言えるな。

私は土偶として生まれたのではない、土偶になったのだ。

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