黒澤明 「白痴」(1951/日)

amazon ASIN-B00006RD6E黒澤明の「白痴」を観た。これはタイトルどおり、黒澤明も大好きらしいドストエフスキーの同名の小説の映画化である。
ドストエフスキー原作で黒澤明が監督で原節子と三船敏郎が出てるとなればもうそれだけで私のツボを直撃である。
舞台はペテルブルグではなく札幌で、登場人物も日本人になっている。舞台や登場人物こそ違えど、いかにも寒々しい雪と吹雪と白い町並みの環境的な状況、登場人物の雰囲気と物語のトーンはとてもドストエフスキー的であった。
どうでも良い話が長々と続いたり、二人の異性の間でふらふらゆらゆらしてみたり、欠点とも問題とも思えないことで悩んでみたり、変なポイントに感受性が強かったり弱かったり、そういうところまでドストエフスキーやった。
なんというか同人誌的ですらあるように思う。
彼の小説が好きな人間にはとても楽しめるのではないだろうか。


登場人物も原節子、森雅之、三船敏郎、東山千栄子に志村喬と申し分なし。そこに京マチ子でも入れば最強であったろう。
始まって直ぐの気のふれた様な叫び声、それに続いて自分は白痴で「発作で何べんもひっくり返っているうちにバカになった」という自己紹介で大笑いである。いきなり何なんやねこの映画、ということでもう画面に釘付けである。
森雅之の白痴っぷり、原節子の「私ずるいんです」っぷり、そして三船敏郎の健康的に発狂という見事な狂いっぷりも文句なしに素晴らしかった。この三人の演技は薄ら寒く怖いほどに真に迫ってた。
しかしながら、ドストエフスキー的と言うのは必ずしも映画としては面白い方向性ではないのだと言うことが良くわかった。
私自身はとても面白く見られたのやけどね。

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