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2009年11月12日




●鶴見済『人格改造マニュアル』 / 以外に真面目な本 / 一切皆苦へのひとつの回答

amazon ASIN:4872333098 私の敬愛する勝山実氏の推薦図書である鶴見済著『人格改造マニュアル』を読んでみた。著者の鶴見済という人はかの有名な『完全自殺マニュアル』 を書いた人でもある。
この本は1993年に出版された 『完全自殺マニュアル』 の三年後である1996年に出版と結構古い本であり、人間の人格を「明るい⇔暗い」、「元気・覚醒⇔落ち着く」の極に分けた上で、「明るく覚醒」「元気」「落ち着く」と自分の望む方向に自分の人格をコントロールするための、薬、ドラッグ、洗脳、サイコセラピー、心理療法、電気ショックなどの、様々な方向からの方法を効果と方向性と副作用や持続時間、それらを手に入れる方法など共に紹介している。

『完全自殺マニュアル』 は当時異様に話題になったのでほとぼりが冷めてから古本屋で二束三文で売られているのを買って読んだ記憶があるけど、この本は未読であった。本来なら完全にスルーするような本であるけど、勝山実氏の推薦図書であるということで読んでみた。そして、勝山実氏が推薦するだけあって、なかなかに面白かった。

著者は冒頭で 『完全自殺マニュアル』 の出版後にバッシングにあって落ち込み、いやな悪意あるインタビューを抗うつ薬で乗り切り、 『完全自殺マニュアル』 の出版前から決まっていたこの本の執筆自体をこの本の中に書いてあることを駆使して乗り切ったと書いている。
冒頭で著者は生き辛さを常に感じていたり生きることが楽しくなかったり、何かに集中したり打ち込めず挫折ばかりしているのが人格のせいであるなら、何らかの方法でそれを望む方向に脳をコントロールして心を軽くして人生をハッピーに過ごせば良いと主張している。
「明るい暗い」「積極的消極的」といった人格は薬やら何やらで脳をチューニングしてやれば簡単に変わるもので、本来的で普遍的なものではないと繰り返し強調しており、ある意味では 『完全自殺マニュアル』 同様に明らかなタブーの領域に踏み込んでいるように思う。
「クスリも飲まずに苦しいのに耐えているのなんか、歯医者にも行かず虫歯の痛みを我慢しているようなもの」という言葉が印象に残った。

本の内容はまぁそれなりに面白い、色々な薬や、サイコセラピーの章などは読み物として結構楽しめる。
しかし、この本が書かれたのは、一般的な世評や扱いのような、煽りやふざけたようなものではなく、いたって真面目で真摯な差し迫った動機や目的によるものであると思う。
彼の提示した方法や意見に全面的に賛同するつもりはないけど、それでも彼の心意気や姿勢には大いに賛同したのであった。

人生と生きることが苦でしかないと前提した場合の、ではどうやって人生を生きるのか、あるいはどうやって生きることを肯定するのか、そういった問い対するひとつの明確な回答ではあるだろう。

ネットを見る限りこの本のとおりにしたからといってそれほど簡単に明るくなったり積極的になったりすることはないということらしいけど、それでも、「明るい、暗い」「積極的、消極的」などといった性格なんかが薬やら何やらである程度は簡単に変わりうる程度の、ある方向から見ればとても流動的ですぐに変化する可能性のあるものなのだろう。
だとすれば「あの人は明るいから良い人」「あの人は積極的元気でステキ」などのように「明るい、暗い」「積極的、消極的」「元気、落ち着いている」などといった性格的な属性を人に対する評価や価値として使うのはその程度のあやふやなものでしかないのだなぁと思った。
そういう意味でこの本はちょっとだけ私の「人間観」や「性格観」を変えたような気がする。

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