キノコの門を潜る/自分の問題がいつのまにかきのこることについて

おっさんになるとなんとも時間の流れるのは早いですね。
今年を振り返るのはまだまだ早すぎるのですが、今年を振り返ってみて私の生活を大きく変えたのは何と言っても「きのこ」でしょうか。
三月に生まれて初めてキノコ先生に引率されて「春のキノコ狩りドーン!キノコ散策ジャーン大会」(ちょっと誇張)に出かけキノコの門を潜ってからというもの、すっかりキノコに魅せられてしまいました。(その模様はこちら)

知れば知るほど、見渡せば見渡すほど新しい世界の広さと深みに驚く経験は、キノコに限らず皆様もご存知のとおり。
植物界、動物界とまったく違う「界」である「菌界」に属するキノコを知ろうとする試みは、文字通り別世界への門を潜る事でした。
せっせとキノコ関連書籍を買い込み、様々なメディアでキノコ知に触れ、胞子を見るためになぜか家にあった生物顕微鏡までムダに導入し、暇を見つけてはせっせときのこっておりました。
部屋で一人、顕微鏡で胞子を覗き込んで「グヘヘヘ、ブヒヒヒ」とニヤニヤしている様は、人から見れば「見なかったことにするレベルの気持ち悪さ」らしいですが、そんなことを気にしていてはキノコ道は歩めません。
機嫌がいいと「変なキノコ食べたん?」、機嫌が悪いと「毒キノコ食べた?」と友人に声を掛けられるくらいになって初めてようやくキノコの門を潜ったといえるのではないかと個人的には考える次第であります。ですよね?

色々なキノコと出会い、色々なキノコを愛で、そして色々なキノコを食しました。
形から色から感触から匂いまで実に色々だと驚くことしきりです。(画像はそれぞれクリックで大きくなります)
  
  

顕微鏡で胞子を見るとこんな感じ。(x1000のドライマウント)

ざっとこのように色々なものに色々な形で生えているのですが、なかでも実物を見てとても感激したものの一つがコレ、梅雨時に見つけたベニタケなる名前のごとく紅色が妙におしゃれなこのキノコです。

正確には「ニオイコベニタケ」だと思うのですが、図鑑には「カブトムシの臭いがする」と書いてあります。
図鑑を読んだときには「カブトムシの臭い てwwなんじゃそらww」と笑っていたのですが、実物を見つけて手にとって嗅いでみるとたしかに「カブトムシのかほり」としか言いようが無い匂いです。そしてなによりも感動したのはその鮮やかな赤とそれが真っ白に変わってゆく絶妙なグラデーションの美しさ。
まさに写真には決して撮ることのできない、図鑑でも言葉でも伝える事の出来ない美しさが私の審美中枢を揺さぶります。
写真には一つのキノコしか載せていませんが、どのキノコもそれぞれに違っていて個性があり、それぞれに味のある美しさがあっていやー素晴らしい。
緑のコケの中からこの赤いベニタケがちょこーんと生えている様など身もだえしそうなほどにメルヘン、まさにキノコのイデアです。

おそらくこれも「ケショウハツ」というベニタケの仲間のキノコ。体ごと小さくなってこのキノコの下の苔の上を転げまわれたらさぞかし幸せだろうなと。
キノコの下で恍惚の笑みを浮かべて転べ回るちっこいオッサンを想像するとなんとも微笑ましいではないですか。ですよね?

話は変わりますが、私は仕事に出かけるのも遊びに出かけるのもそこそこの距離であれば、どこへ行くのも自転車で移動します。
そんな自転車乗りにとって「雨」は最も嫌なものの一つです。
出勤時や遊びに行こうとしたときに雨が降っていると、もうなんだか気分がどんよりしてきて機嫌がマイナス方向へ傾いてしまいます。
ちょっと雨が降っただけで「あーもーどうせ生きていても楽しいことないんやー土砂降り人生やー!」とまで思いつめることもちらほら。
世の中自分の思い通りにならないことの方が多いのだと自分に言い聞かせても、簡単に気分は晴れません。
そして今度は雨が降っただけで気分がどんよりする自分自身に対してうんざりするという悪循環に…
しかし、私が雨でどんよりさせられる一方、キノコなるものはそんな私の思惑など全く関係なく(当たり前ですが…)雨が降ると水をいっぱいにその菌糸に吸い込んで様々なものを分解したり合成したりして取り込み、すくすくと育つようです。
確かに雨上がりしばらくしてキノコ散策に出かけると、キノコたちがいっせいに地面や倒木から顔を出して伸び上がっているのが実感できます。
今まで雨が降るたびにどんよりしていた私ですが、キノコの好きになってからというもの、逆に雨が降ればキノコが雨を吸い込んでニョキニョキ伸びるさまを想像し、キノコ散策のチャンス到来!シャーッ!とばかりにワクワクするようになりました。
今まで大嫌いだった梅雨が今年から大好きな季節になり、そしてそんな自分に驚いています。
キノコのおかげで、まさに思いもよらない方向から、思いもよらなかった方法で、解消されることの無かった自分自身の何かしらの問題点が全く逆の肯定的な方向に反転している事に気づいたのでした。

人間なら誰しも何とか自分自身の悪いところを無くしたいと、自分自身を少しでも良い方向に変えたいと日々願っています。
自分の悪いところや嫌なところ、なりたい自分や目指したい方向をひたすら見つめるのも確かに一つの道かもしれませんが、ネガティブなものや無いものばかりを見るばかりでは気が滅入ってしまいます。
時にはそんなことを忘れて、ひたすら自分が面白いと思える別世界を見つめていると、ふと気づけばいつの間にか自分の持つ問題が問題ですらなくなっている事に気づく、そんなことがあるかもしれませんね。
いや、実際にそんなことがありました。というお話でした。

いやー本当にキノコってキノコですねーニョキーッ!!

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