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2014年1月16日

色つきのブレーキゴムとファンタジー

家には私用の自転車が3台あって、雨の日とか鴨川の土手を走るとか雪道を走るとかいったようなハードな用途にはいつもMTBを使っている。

こいつのブレーキは最初期型のXTR、BR-M950というVブレーキで、ブレーキシューのゴム部分だけを交換できる構造になっている。

以前、買った時についていたシューが磨耗してなくなった時にそのゴム部分だけを買い換えたのだが、車体が赤と白のツートンなのでゴム部分も赤にしようということで、タイオガの互換のシューを、良く行く近所の自転車屋さんにわざわざ取り寄せまでしてもらって買ったことがあった。

たぶんコイツの赤↑

しかし乗ってすぐに、シューが赤くてもすぐに汚れて黒くなり、赤である意味を成さないことに気づいた。ゴムは使い込まれてどんどん赤黒くどす黒く汚れていくのに、誰も見ないリムとの接触面だけは常に赤く綺麗なままという、生活に疲れ果ててくたびれつつも、家ではふりふりのネグリジェを着て「良かった探し」をしながら1人眠りにつくおばちゃんのよう。

しかも、ブレーキをかけると効き具合に関係なく「ギャギャギャーーー!」と辺り一帯の人が振り返るほどの大きな音がする。「ちょっとスーパーまでお豆腐を買いに。」というときでも派手な音を立てて路地の曲がり角をコーナリングしてゆく様は、「1人イニシャルD状態」でもある。

はっきり言ってこのブレーキシューを買ったのは失敗だった。もうすぐにでも捨ててやろうと思ったのだが、どす黒く汚れつつも叫び声をあげながら懸命に自転車を止めようとするけなげな様に打たれ、うん…でも音鳴きだけはしばらく使って馴染んだら減るかもやし…という期待をこめてしばらく使っていた。

しかし何時までたっても音鳴きは軽減するどころかますます酷くなってくるような気がする。こいつは馴染めば馴染むほど分かり合って阿吽の呼吸で無口になるのではなく、何を言っても許されると勘違いしてどんどん毒舌になってゆくタイプだ。あーもーブレーキをかけるのが恥ずかしいレベルである。

でも折角買ったんやし、減ってから買い換えようと思いながらずっと乗っていたのだが、先日からふとこの強烈なブレーキ音がネットのどこぞで見つけた画像とリンクするようになった。

コレ↑

ブレーキの鳴く「ギャーーー!」というと音と、この絵のイメージが脳内のどこかで繋がってしまった。まいっちんぐミッシングリンクというやつですな。

ブレーキをかけるたびにこの画像が頭に浮かび、「確かに色々な意味でブレーキやわw」と思いつつも、「これはアカン。精神をやられる。」ということで、昨日の仕事帰りに同じ店でシマノ純正の黒いブレーキシューを買ってきた。

寒空の下、満月に照らされて凍えながら庭で交換したのだが、鳴きもせず良く効くし、これは快適すぎる。

いやいやーやっぱり普通が一番ですな。無意味なところで色気出したらあきませんなーと思いながら、外したシューを見て驚いた。全然減ってないのだ。

普通のブレーキのゴムは自転車の運動エネルギーをリムとの接触面で熱に変換したり、自らが磨耗することに消費して減速しているわけだけど、このブレーキはどんどん汚れを取り込んで自らを守りつつ、運動エネルギーを「音」に変換するという新次元の制動方式だったのかもしれない。うん。やっぱり全方向的に異次元のブレーキのゴムだったよ!

 

そういえば、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の中でピンクの女の子が、やみくろ世界を抜ける時に心の闇に引きずり込まれてやみくろ世界に取り込まれないよう楽しいことを頭に思い描くために唄う「自転車の唄」というものがある。

このシーンは私にとってありとあらゆる文学的なものの中で最も美しいシーンの1つだと思って止まないのだが、歌の内容はこうである。

四月の朝に

私は自転車にのって

知らない道を

森へと向った

買ったばかりの自転車

色はピンク

ハンドルもサドルも

みんなピンク

ブレーキのゴムさえ

やはりピンク

うん、今となってようやく理解した。

どれだけ汚れようが磨り減ろうがくたびれようが、ずっと変わらずピンクのままであり続けるブレーキのゴムは、人類にとって永遠のファンタジーだったんですなー

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