ウィーンその4 /レオポルド美術館 /エゴン・シーレの奇妙な冒険/放置プレイのちツンデレ

美術史美術館を出て、直ぐ真裏にあるミュージアムクォーター「MuseumsQuartier Wien」に移動する。
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これがミュージアムクォーターの正面の建物で昔は王宮の厩舎として利用されていたらしく、この向こうは6万平方メートルもの広大な敷地の文化芸術区画となり、様々な美術館や博物館、劇場や展示ホールや図書館などの文化施設が集められている。
その正面の建物を潜って中庭に出るとこんな感じ。
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正面の建物は企画展の展示場であるクンストハレ (Kunsthalle Wien)で、写真に写っていない右側に近代美術館(MUMOK)が、左側にはわれらが目指すレオポルド美術館 (Leopold Museum)がある。
その中庭にはベンチとして使用されているこんな感じのカラフルな現代アート的なオブジェが設置されており、
この写真を撮った時は時間が早かったせいか観光客風の人達ばかりだったが、美術館の帰りのお昼過ぎにここを通ると大勢のおしゃれさんな若者たちがこのベンチでくつろいでいた。
どうやらウィーンのリア充と呼ばれる類の人たちの間では、このベンチで寝転がって本読んだり喋ったりおやつや昼ごはんを食べたりするのが中々に心地良い事らしい。
ガイドブック的なものには「MQにはウィーンのおしゃれな若者が集う」と書いてあり半ばビビリっていたのだが、たしかに彼らをナウなヤングといわずして何と呼ぼうや。太陽のの降り注ぐMQのベンチに寝転んで、個性的な服を着こなして楽しそうにしている若者たちを見ていると眩し過ぎて目がー!目がー!
でもみんな良い服着てるのに、土足のまま上がるところに寝転がって服が汚れたりしないのかちょっと心配になった。ちょっとだけ。
ということでレオポルド美術館に到着。入って直ぐのホールにはクリムトとエミーリエ・フレーゲの写真が。
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美術史美術館が伝統的で古い作品を所蔵していたのに引き換え、このMQ全体が現代的な方向性を持っており、このレオポルド美術館も19世紀末のアール・ヌーボーの時代、ドイツ語圏ではユーゲント・シュティールと呼ばれたジャンルの美術品を所蔵している。
中でもクリムトと世界最大のエゴーン・シーレのコレクションがこの美術館の目玉でもあり、我々がここに来た目的でもある。
2012年はクリムト生誕150周年の「Klimt 2012」と題して、色々な美術館でクリムトにまつわる特別展が開催されていた。
この「Klimt 2012」のウェブサイトも中々気合が入っていて、自分の写真をクリムトの絵と合成できるページまである。私も「走る接吻爆弾娘」と題して作ってみた。いかがだろう?
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しかしこれは誰かわかりにくすぎるけど、最近17年ぶりに逮捕された菊池直…
で、このレオポルド美術館でも「KLIMT PERSÖNLICH」なる特別展をやっていた。
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日本語に直してみると「クリムトその素顔」という感じだろうか?クリムトの個人的な写真やら手紙やらが何部屋も埋め尽くすくらいに大量に展示してあったのだが…
当然というか、予想通りというか、ドイツ語も説明文の英語もサッパリで良くわからんかった…
この美術館の一番有名な作品は、上の写真のポスターでも使われているクリムトの「生と死」である。
549.jpg(写真は公式ページより拝借)
今まで画集やら何やらで見てきたものの実物を見るとさぞかし感動するかと思ったら意外に「ふーん」な感じだった。
この「生と死」だけでなく、総じて他の美術館のクリムトの絵のどれも観てもなぜか「ふーん」以上のものを感じずに不思議だった。
今まで散々画集とかで見すぎて期待が大きすぎたせいかと思ったけど、実物を見たことが無かったエゴン・シーレの作品はとても衝撃的だったのでそれだけではないようだ。
クリムトに引き換え初めて実物を見たエゴン・シーレの自画像群はとても衝撃的だった。
以前に中之島の「草間彌生展」に行ったが、あの時と同じくらいの衝撃であった。
エゴン・シーレは若い頃から絵の才能を認められ、アドルフ・ヒトラーが不合格だった年にウィーン美術アカデミーに入学したものの学校教育になじめずドロップアウトしクリムトの弟子となる。
裸体モデルだった少女ヴァリ・ノイツェルと同棲するものの、別の女性エディトと結婚し、同時にモデルだった妻の姉アデーレとも関係があって…と中々に無茶苦茶な生活を送った。
中々に男前の上に芸術家ということもありそれはそれはモテモテだったに違いないと容易に想像できる。
そして第一次世界大戦中の1918年、クリムトがスペイン風邪の合併症で死んだほぼ8ヵ月後、彼も同じくスペイン風邪なるインフルエンザをこじらせて28歳の生涯を終えた。
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この写真はレオポルド美術館入ってすぐのところに飾ってある巨大なエゴン・シーレの写真
彼の作風を一言で言うと「わたし大好き、わたし大嫌い」という感じであろうか。
彼は自分自身を「超絶イケメン」とみなしていたし、また自分を天才だとも思っていた。
しかし、同時に彼は自分自身の醜さからも目を逸らさずにそれを絵として表現している。
彼は大量の自画像を残した。そして後期の作品になるにつれ、彼の各自画像は歪み崩れ自分の醜いところばかりを書くようになっていった。
彼の絵、特に自画像には人間の内在する醜さとか分裂性だとか混乱がとても良く現れているように見える。
まずはレオポルド美術館内の自画像シリーズ
まず有名どころの自画像
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妻のエディトの肖像画と並べて展示してある
自画像
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だんだんJOJOっぽくなってきた
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説明映像の光が映りこんでいるけど…タイトルは「自画像、男と死」
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後ろにいるのは「死」だろう。彼にとってスタンド的なものは自分に取り付くものの象徴だったのかもしれない。
完全にJOJO立ち、タイトルは「隠者たち」、シーレの後ろにいるスタンドはグスタフ・クリムト
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彼にとってクリムトは自分を守ってくれる存在でもあり、自分に取り付いている存在でもあったのかもしれない。
こうなると完全に分裂している。
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余り見ない彼の書いた風景画
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こんな風にありがちな前衛的な絵も描いている。
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彼が書いた自分以外の人間
妻エディトとその姉アデーレ
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「母と二人の子供」
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「母と子」
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「恋人たち」
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この絵に描かれている恋人たちは抱き合っていても
後ろの男はまっすぐにこちらを見ているけど、抱かれている女は自分の頭上を遠い目で見ている。
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なんだかエゴン・シーレの恋愛観とか人間観が伝わってくるようですなぁゴゴゴ…
そしてお昼ご飯はレオポルドミュージアムに併設された「Café Leopold」で食べた。
店に入った時、ムダに忙しそうな店員さんはちらりともこちらを見てくれず完全に無視されていたので、勝手に座っていいのか案内されるまで待つべきかどうかわからず、しばらく待ってみたのちに忙しそうに働くカウンター内の店員さんに無理やり話しかけた。
店員さんは何かを作りながら面倒くさそうに「ハァ?そのへんに座れ」的な事を言ったので、むむむ…と席に座ったのだが、その割りにテーブル担当の店員さんは愛想良くて親切で、ちょっとパンクな出で立ちとベリーショートが日本では余り見ないほど似合っていて大変好ましかった。うむ。
この「放置プレイのちツンデレがこっち風かぁ…」とか「個人主義の国では積極的にアピールせんと席にも座れんのか…」などと思っていたのだが、
我々の後に店に入ってきたお客さんもことごとく無視され、呆然と立ち尽くしたまま放置プレイに耐え切れず、店員さんに話しかけることも話しかけられることも無いままに帰ってしまう人たちが何組もいて可笑しかった。
どうやらこれはこっち風がどうとか個人主義がどうというよりは、このお店がこうのようですな…
むむ、もうすこしで初めて体験したものをそれらしく一般化してしまう罠にはまるところであった。
で、メニューのドイツ語が良くわからないままに、我々はとりあえずそれらしいものを「サラダと何とかパン」的なものと「チキンの何とかセット」的なのを一つずつ注文した。
で、運ばれてきたのがこれ。
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サラダと何とかパン
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うむ、とってもヘルシーな感じ
チキンの何とかセット
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とってもたくさん。
私の目の前に運ばれてきてたものを見て「あー!何とかセットてハンバーガーかー!朝もカイザーゼンメルにハム挟んだやつやったのにー」と思ったが、食べてみるとちゃんとしたチキン予想以上に美味しかったので、そのうち考えるのをやめた。
ということで「レオポルド美術館」編終了、
次は、ウィーンの若者のお買い物街である「マリアヒルファー通り」へ続く…

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