「海洋堂フィギュアワールド」@京都伊勢丹美術館えき/琳派的なものとしてのフィギュア

「すでに終わってしまった展覧会の感想を書くシリーズ」、今回はあと三日、2014年8月31日に終わってしまう京都伊勢丹美術館えきで開催されている「海洋堂50周年記念 50th KAIYODO Anniversary 海洋堂フィギュアワールド」の感想を。(リンクは会期中のみなので魚拓を)

この展覧会はフィギュアで有名な海洋堂の歴史から作品までを紹介するもので、町の模型店として出発した海洋堂が既成の模型では納得できずにガレージキットを作成し、そこから現在のフィギュアに至る歴史と代表作が展示してあった。

動植物から妖怪、戦闘機から艦船、アニメキャラから萌えキャラまでありとあらゆるジャンルのフィギュアが創業時から現在に至るまでひたすら並んでいるのは中々圧巻で、
昔私がひたすら集めていた「チョコエッグ」の「動物シリーズ」や「世界の戦闘機シリーズ」も展示してあって懐かしかった。
ガレージキットやフィギュアを作成し始めた当初は特撮物やアニメキャラと特定の層に対してピンポイントで受けるものだけだったものが、チョコエッグの動物シリーズで一気にメジャー化したようである。
確かに私が海洋堂を知ったのもそのチョコエッグの動物シリーズで、今までの「おまけ」と全く違うレベルの造形に惚れ惚れしたものだ。
この「アジリゴク」とか「ヤエヤマセマルハコガメリ」の作りなんかどうよ?

圧倒的に二次元的でかつ極限までデフォルメされた浮世絵、そして装飾性やデザイン性と緻密さを両立させた琳派が、三次元的で写実的な手法と見方に囚われていた西洋絵画にジャポニズムとして大きな影響を与えてモダニズムの発端となったように、
現在の日本のアニメ文化とフィギュア文化が日本のサブカルチャーであり続けるのではなく、世界的なメインカルチャーの一角に食い込んで新たなムーブメントを起こしつつあると言われている。

村上隆がデザインして海洋堂が製作した巨大フィギュアがサザビーズで16億円で落札されたって話があったけど、
まさにそれこそ日本ではサブカルチャーとされているアニメやフィギュア文化が海外ではメインカルチャーの一角として扱われている証拠であるような気がする。

今までのメインカルチャー系の芸術が基本的には特定のパトロンの求めに応じて作成される一点物だったのに対し、
浮世絵や琳派が支配者階級の武家や公家でなく町人文化に根ざしたものであることと、アニメやフィギュアが大量の複製を前提とした量産型であることは、「芸術の大衆化」と無関係ではないだろう。

展覧会の内容によってお客さんの層が変わるのは中々面白く、この展覧会は「海洋堂」やら「フィギュア」だけあって「大きいお友達」が多いのではないかと予想していたのだが、実際は半分以上が親子連れで「大きいお友達」はほとんど見かけなかった。

「百貨店美術館」に「大きいお友達」が押し寄せて「伊勢丹がとらのあな状態」な絵柄を楽しみにしていたのに残念であったが、それでも、親子連れが殆どと言うことで、全裸であるよりも破廉恥な格好の特定の層向けの萌え系美少女フィギュアを放心したように見つめる小学生と思しき男子、そんなフィギュアに蔑みと怒りの眼差しを向ける母、子どもを差し置いて熱心に萌えフィギュアを食い入るように見つめる父など、こういったフィギュアは色々な人の今まで抑圧されていたり秘められたりしていた 色々な感情や嗜好を覚醒させるポテンシャルをも持つエネルギーがある。

チョコエッグ系のおまけフィギュアをなんとなく机に置いている私ではあるが、絶妙なポージングで林立しているヒーローやロボットや怪物はもちろん、そんな美少女フィギュアを眺めていると、確かにこれは単体のアートとして男性や生物やロボット、そして女性の持つある種の美や醜の極限の部分を見事に表しているなぁと思うようになった。

架空の世界を描くアニメや漫画を本来は手にとって鑑賞されたアートである浮世絵的なものであるとするなら、フィギュアは手元に置いて眺められる対象であるという意味で琳派的なものだといえるかもしれない。

この大量頒布型のアートであるフィギュアはこのように美術展で見るのではなく、琳派の屏風を部屋に置いて眺めるように、手元に置いて日常に組み込んで愛でてこそ意義があるのだ。
うん。これはもう美少女フィギュアを買って飾るしかない!…と思ったけど、アカンアカンそっち行ったらアカーーン!ということで踏みとどまった。

というわけで、そんなあなたの中にある何かを目覚めさせるかもしれない「海洋堂50周年記念 50th KAIYODO Anniversary 海洋堂フィギュアワールド」は2014年8月31日まで。いそげー

といいつつも、同時開催されている入場料も何もなしのポルタやら駅ビルでやっている「海洋堂ジオラマワールド」で十分じゃないかと思ったのは内緒だぞ!
わざわざ800円払ってまで行きたくないという人はこっちの「海洋堂ジオラマワールド」にいそげー

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