フルメタル部屋の片付けその4 /発掘!徳川土偶埋蔵金

フルメタル部屋の片付けその3 / 部屋の片付けダイアリーズ
の続き、未読の方は上記エントリを先にお読みいただくのをお勧めします。
汚部屋脱出サイトやら部屋の片付けブログを読んでいて一番面白いのは「こんなものが発掘された!」というレポートだと思う。
小学生のころに書いた可愛らしい作文を読んで自分にもこんな頃があったのかと和んですぐに落ち込んだり、中二病満開のポエムを発見してしまい頭を掻き毟ったりうわーーーとなって落ち込んだり、持っていたけど忘れていたバブリーな服が大量に発掘されてファッションショーが始まったものの太って着れない服ばかりで落ち込んだり。
「…って落ち込んでばっかりやんけ!」的なエントリが、そういった「片付けブログ」や「汚部屋脱出サイト」の醍醐味であろう。
「ちっちゃな頃から散らかして、15で汚部屋と呼ばれたよ、星一徹みたいに激昂しては、触るもの皆ひっくり返した。」のような、
「ぐちゃぐちゃ汚部屋の子守唄」のごとく、よく訓練された汚部屋住人が小さな頃からずっと住んでいる部屋であれば色々なものが出てくるはずである。
インディー・ジョーンズから徳川埋蔵金まで。そういった発掘ネタに事欠かない世の中である。
時にはこんなに価値のあるものが発掘された!!という事も大いにありうる。
果たして土偶部屋からはどんな笑えるものが出てくるのだろう?


まず最初はこれ。
tatebue.jpg(クリックすると拡大)
小学校の頃に得意だった「たてぶえ」、ソプラノリコーダーである。
現在でこそ私は、電子ピアノを買ったもののバイエルをはじめたばかりですぐに投げ出す音楽負け組みな体たらくであるが、小学生の頃はなんでも耳コピしてアレンジながらたてぶえを吹く「アドリブたてぶえトッププレイヤー」だった。
もうたてぶえなんか吹くことはないけど、その頃の過去の栄光が忘れられずに持っていたものである。
そして、これを発見して、人生に二度あるというモテ期の二度目のピークであった小学生の頃を思い出しながら、ひさしぶりにたてぶえを吹いてみた。
とりあえず最初に吹いたのは「たま」の「さよなら人類」ですな。
書いたついでに「たま」について調べていたら、Wikipediaに「たま」が「日本のビートルズと称される」と書いてあってびっくりした。
私はビートルズをほとんどまったく知らないので、私の頭の中で「たま」が「日本のビートルズ」なのではなく、むしろ逆にビートルズのほうが「大英帝国女王陛下のたま」であると認識された。
しかし、「大英帝国女王陛下のたま」と呼ぶと、ビートルズが女王陛下と帝国の飼い犬みたいでぜんぜんロックじゃないねー
まぁ、キダ・タローが「浪花のモーツァルト」であるというよりも、むしろモーツァルトが「ウィーンのキダ・タロー」であるようなものですな。
などと脱線するのも部屋の片付けの醍醐味であろう。
ひとしきりたてぶえを吹いた後、次に発見されたのはこれ。
hanko01.jpg(クリックで拡大)
缶の絵柄が微妙に時期的にヒットしてるけど、今の所それは関係なく、問題はこの缶ではなくこの缶の中のものである。
hanko02.jpg(クリックで拡大)
篆刻用の石である。既に彫ったの、彫りかけ、彫る前、大きいのから小さいのまで各種取り揃えて結構たくさん。
過去に、ちょうど大学に入る前位の時期に、何の役にも立たないハンコをひたすら彫っていた時期があった。
そもそもは書道をやっていた友人に影響されてはじめたものの、そのはまり方は尋常じゃなく、その教えてくれた友人がちょっと心配するほどで、毎日毎日ひたすらキリキリと石を刻んではニヤニヤしていた。今思えばただのアブナい人である。
今も大差はないといえばそうかもしれないが、更に面白い(悪いことに)、この時期はおそらく今までの私の人生の中での一番病んでいた時期なので、彫っていた文面も突っ込みどころ満載である。しかも、「こんなんどこで使うねん!」っていう実用に耐えない物ばかりである。
とはいえ、この篆刻の技術のおかげで、私は自分の実印を自分で彫ったのだった。人生何が役に立つかわからんねー
と無理やりまとめて、写真を撮るために久しぶりに紙に捺してみるとなんか当時のことが思い出される。
いくつか紹介してみる。
rengoku.jpg(クリックで拡大)
煉獄」…うーん病んでるねぇ。なんつーかカトリック的?
かのごとく酷き海をあとにし、優れる水をはせわたらんとて、今わが才の小舟帆を揚ぐ
かくてわれ第二の王國をうたはむ、こは人の靈淨められて天に登るをうるところなり

(アリギエリ・ダンテ 『神曲』 淨火@青空文庫)ってところか?あ?
shoutai.jpg(クリックで拡大)
次、「聖諦」。
直接的には太宰治の小説から取った(ような気がする)言葉であるけど、本来は仏教で言う「四諦」のそれぞれを、涅槃経では「苦聖諦、集聖諦、滅聖諦、道聖諦」と呼んだ言葉であるらしい。
でもまぁどっちにしろ病んでることには変わりないわな…
lovesea.jpg(クリックで拡大)
そして次、「海が好き
「それがどうした?」な上に「 ( ´_ゝ`)フーン(´ι _`  ) あっそ」という感じであるが。
今見ると海の母の部分が魚の形になっていたり、海の母の上の部分がアナゴになっていたりと微妙に凝ってて笑った。
これは結構気に入った。年賀状とかに捺せそう。
uu.jpg(クリックで拡大)う~」
これはまったく意味がわからん。こんな意味のないハンコはどこを探してもないだろう。
おそらく私の苗字の音を取ったものだと思われるが不明。うなり声かもしれない。
結局、「う~」と「海が好き」のハンコだけをいつでも使えるように残して(使うつもりらしい)あとはまた引き出しの奥に封印。次に会うのは何年後だろう。
ふと、何年後かにまたこの缶を見つけて、「お掃除大好き収納フェチなワタシ」に生まれ変わった今のことを思い出すために「整理整頓」とでも彫って入れておこうかと思ったけど、画数が多すぎるので数秒で彫るの諦めた。
「ウェーブ様」「クイックル先生」とでも彫るか?と頭によぎったけど、これではハンコとしてあまりに意味がなさ過ぎる。
私にとっては「天下一品」くらいが画数的にベストなのだが、それでは何のことやらさっぱり分からないし、さすがにそこまで自意識過剰じゃない。
それに、そもそもハンコに彫る言葉は画数で選ぶのじゃなく意味で選ぶべきである。
まぁ、結局発掘されたハンコたちは再びそのまま引き出しの奥にインである。
そして最後は本。
私の部屋の壁の一面は本であるので、さぞかし面白いものがあるかと思ったけど思ったほどカオスではなく、しかも片付けの初期段階でことごとく楢山節考して来たのであまり残ってないのであるが、とりあえず一つだけ紹介する。
kaitei5mile.jpg(クリックで拡大)
昔読みたかったジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』と間違えてネットで買った、『海底五万マイル』。
ジュール・ヴェルヌの小説とはまったく関係ない、アダモフなるソ連の人が書いた冒険活劇少年向け小説である。
講談社の『少年少女世界科学冒険全集』なるものの11巻らしい。
なんつーか表紙を見るだけで「子供騙し感」満開というか「エセ科学バンザーイ」な匂いがする。
かの有名な「イルカがせめてきたぞっ」っと同じ匂いですな。
さらに、アダモフといえばアダモちゃんを思い出す世代としては「ア・ダ・モ」という組み合わせの連続音が入っているだけで脱力してくる。
ネットの本屋でついでの二束三文で買ったものの、到着して包装を解いて表紙を見た瞬間に「やっちまった感」でがっくし来て「ぺぃっ!」と本棚の奥でずっと寝かせてたのである。
このアダモちゃん(ハ~イ!!)の書く潜水艦は5万マイルつーことで、よく考えれば水深二万マイルで船体が潰れそうになってたノーチラス号の2.5倍も潜ってるではないか。
タイトルだけ読む限り何気に高性能である。ソ連の科学力は世界一ィィィってところであろう。ネモ船長のプライドなんかズタズタである。
パラパラっと目次を見る限り、大海蛇と大イカとバラクーダが戦い、マッコウクジラと大タコが戦い、大カニの大群や古代の恐竜と戦う目茶っぷり。
更にこの潜水艦には赤外線偵察機を両舷に、原子砲を船首と船尾に装備してあるらしい。
この、『海底五万マイル』は、『海底二万マイル』に比べて、ある意味での面白さも香ばしさも2.5倍以上は軽くありそうだ。
とは言え、だからといってこれからも読むつもりは全くないけど。
しかし、この香ばしいのは表紙とその内容だけじゃない。
表紙をよ~く見ると驚くべきことを発見した。
5milekudou.jpg(クリックで拡大)
ほ、翻訳が、く、工藤精一郎ではないか!
ご存知のとおり工藤精一郎と言えばドストエフスキーやらトルストイやらツルゲーネフ等を訳している有名なロシア文学の翻訳者である。
私は新潮文庫のドストエフスキーの『罪と罰』を何度も読んでいる。こんな所で工藤精一郎の名前を発見するとは…
なんかこれは、売れているアイドルが過去にエロス本のモデルをやっていたり、尊敬する先生が学生時代に家庭教師先の右も左も判らないうら若き乙女に手を出してしまい、実はそのおにゃのこが今の奥さんがだった事を知ってしまったかのような感触である。
それからこの表紙は小松崎茂なるプラモデルの箱絵からメタルギアソリッド2の限定版付属冊子内イラストまで手がけた、その筋では結構有名なイラストレーターの手によるものであるらしい。
ネットで調べてみると、なぜか微妙に高い本であったりして二度びっくりである。もうこれはドナドナっと売り飛ばすしかない。
工藤精一郎と小松崎茂の上にネットでは高値とあってはこれはもう大事な大事な本である。
当初の粗末な扱いはどこへやら、そそくさと大事に本棚の奥に仕舞い込むのであった。(でも読まない)
そして、地球シミュレーターか?というくらいに混沌としていた押入れゾーンも、あらゆるものが発掘されつくし、絨毯爆撃と朝のナパームによって綺麗になり、部屋の片付けは終了した。
長きにわたる革命闘争は今ここに独立という形で終結したのである。
片付ける前はイエス・キリストの系図のようだった私の部屋も、勇者ロトの家系図くらいにシンプルになったのであった。
めでたしめでたし。
で、結局、地球シミュレーターのようであり、キリストの系図のようであもあるこんがらがった部屋ではあったけど、大したものは発掘されなかった。というオチである。
それでも、何も出てこないという意味合いでは徳川埋蔵金と同じであると言い張っておこう。
次回「部屋の片付けその後に / エピローグ」乞うご期待
(最終回じゃないのぞよ。もうちょっとだけ続くんじゃ。)



2件のコメント

  • 早速お教えいただき有難うござりまする。m(__)m
    んな~るほど、enzianさんでもこっぱずかしがるんですねぇ~(^^)
    今年は、絵画と詩の鑑賞にもちゃんと入門しようと思っていたところ、新年早々良さげな本をご紹介いただき、正直びっくりしています。
    さっそくアマゾンでポチッてしまいました。
    早く届かないかワクテカです。

  • 篆刻までやっていたのか‥‥
    いやはやすごいね。
    で、その、あの、本はね。
    茨木のり子『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書)です。
    こっぱずかしくて書けなかった理由が
    わかったでしょ?^^

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