海三日目、スカ

海三日目、
台風四号が日本海で荒れ狂っていたが、なぜか海は穏やか。
一時間ほど潜ってみた。
潜ってすぐの砂地で戯れに巨大シロギスを撃ってみたら見事にあたった。
これは幸先良いぞと思いながら泳いでいると、波消しブロックの手前に巨大イシダイ発見。
潜行してゆっくり近づきながら寄せを試みる。寄る気配は無いけど逃げる気配も無なさそう。
寄せをやめて距離を詰めるとイシダイは目の前を横切るラインを通ってゆっくりと射程距離に入ってくる。
ヤスのゴム引きはマックスな上に息止めもまだまだ余裕がある。
イシダイが射程距離に入り、更に近づいてくる。そして身を翻して離れてゆく瞬間の絶好の瞬間にヤスを放つ。
しかし、これ以上ないというベストな状況、当たれば確実に弾かれずに貫通という斜め後ろの位置から、なぜかヤスは明後日の方向に飛んでゆく。
「あ”~」と水の中で叫ぶも既に遅し、バシュっというヤスの音と体のすぐそばを通る鉄の棒に驚いてイシダイは一瞬のうちに海の彼方に消えてしまった。
がっくししながら水面をプカプカ浮かぶ私のわき腹を五センチほどの子供イシダイがついばむ。
もうイシダイになめられっ放しである。


気を取り直して岸近くの岩場を捜索中二十センチほどのキジハタを発見。
難なく真上から背中を撃って岩に押さえつけて捕獲。
これは周りにももっといるぞということで更に捜索中、目の前で縄張り争いを繰り広げてにらみ合っているキジハタを発見、
心の中でほくそえみながらゴム引きマックスででかい方にヤス先を向けて鰓蓋のあたりめがけて一撃。
しかしヤスは外れて横の岩に直撃、キジハタは縄張り争いを中断して小さいほうは近くの岩の間にもぐりこみ、大きい方は沖に向けてゆっくり逃走。
またがっくししながらもあわてて逃げてゆく大きい方のキジハタを追跡するべく、逃げていった方向に泳いでゆく。
逃げたキジハタは見失ったけど、水中に一段と大きな沈み根を発見、そしてその沈み根の中腹あたりでホバリングする今まで見たこともないような巨大なハタ系の魚のシルエット、カサゴかメバルかキジハタかそのあたりの形であるが、確実に50センチはあるので、恐らくキジハタであろう。
一気にあふれてくるアドレナリン、一旦浮上して息を整え、ヤスを引きゆっくり潜行した後、その沈み根に横方向から近づく、巨大な魚のシルエットが段々あらわになり、魚はこちらに気付いて顔をこちらに向ける。
大きな口とオレンジ色の美しい斑点は間違いなくキジハタである。
でかい魚はその体の厚みに驚くのだが、恐らくヤスが貫通しないほどの厚みに圧倒される。
徐々に近づいても、魚は逃げる気配はない。じろりとこちらを睨んで鰓と胸鰭を広げてこちらを見ている。
ヤスを向けながらゆっくり近づき、難なく射程距離に入る。
しかしそこからが難しく、更に距離を詰めようとすると逃げるそぶりを見せるので、射程ギリギリでにらみ合う。
撃ちたくなるがしかしここで撃っても確実に刺さらずに弾かれる。右や左にゆっくり移動してもキジハタはそのつど体を回転させて正面をこちらに向ける。
射程ギリギリなのでヤスゴムのパワーで無理やり押し込むほどの近距離でもないし、このままでは撃てない。
水底にへばりついてキジハタが横を向くのをじっと待っていると、キジハタははっと体を左斜め上に向け、私の左上の何かを見た。恐らく別のキジハタか何ものかが通りかかって注意をそちらに向けたのだろう。
私から注意を逸らし、キジハタの体の右側面がこちらに向いた瞬間、とっさにキジハタ鰓あたり目掛けて正面右から思いっきりヤスを撃つ。
ヤスは一直線に狙い通りのところにヒットするが、ヤスは刺さらない。
ガシュッという音と共に辺りに数枚の鱗が飛び散るだけ。
巨大キジハタは一瞬にして沖に消えていった。
またも海中で絶叫するが時既に遅し、尾側からではなく頭側から鱗の目に沿った弾かれやすい方向から撃った上に、巨大キジハタの鱗は思った以上に分厚くて硬かったのだろう。
しかも二日の間何度も岩を誤射し、直前に岩を直撃させたヤスの先はぜんぜん尖ってはいないどころか少し曲がっていた。
一匹目の巨大イシダイに二匹目の巨大キジハタと絶好のチャンスで見事に取り逃がしたあまりのショックで、シロギスと小さいキジハタの写真を撮るのを忘れた…
あーあ、やっぱり前日で運を使い果たしていたに違いないと思うのであった。

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