ウィーンその3 ウィーン二日目、「美術史美術館」/はっちゃけすぎる宗教画
カールス教会を出て「美術史美術館」へ向かうために路面電車の停留場オペラ座のまん前の「oper」からリンクを時計回りする路線1に乗る。
乗ったものの「美術史美術館」へ行くにはどの停留所で降りれば良いのかいまいち良く判っていない。
ウィーンの路面電車の良い所は、一つの停留所の間が歩いて直ぐの距離にあるので、行く方向とか路線さえ大体あっていれば、たとえ目的地を通り過ぎてしまっても次の停留所で降りて戻れば全く問題ないというところにある。
と聞いていたので、「美術史美術館」は窓から見えるはずやしそれらしいところで降りれば行けるやろうととてもアバウトな乗り方であった。
初めて乗った路面電車で窓の外などの景色や建物をおのぼりさん満開で「キラキラや~」「ゴテゴテや~」「うへ~♪」と眺めているうちに、「??あれ?今の美術史美術館ちがう??」「ん?止まらんなぁ…」「あ~~通り過ぎた~~!!」と慌ててから次で降りても全く問題なかった。
路面電車とかバス的なものは、観光名所の正面で止まるに違いないと思い込んでいたけど、どうやらそうではないらしい。
「美術史美術館」はルネサンスからバロック時代の絵画が充実していてメジャーなので「美術館」扱いされるけど、全3階中、2階のフロアだけが絵画展示で、1階は古代エジプトからギリシャ・ローマあたりの工芸品や彫刻が、3階には世界各国の各時代のコインが展示してあるので、「美術館」というよりは「博物館」の方がしっくりくる。
実際にネット上でも「美術史美術館」「美術史博物館」の二つ呼称が混在している。
「美術史美術館」の呼び名の方がメジャーだが「Kunsthistorisches Museum」なので実質的にも「美術史博物館」に近い感じだ。
もっともドイツ語では美術館も博物館も区別せずに「Museum」と呼ぶのでどっちでもいいような気もするが…いやもうほんまどっちでもええわ。
KHM(Kunsthistorisches Museum)のサイトはここ
「美術史美術館」の正面にはウィーンの母的なマリア・テレジアの像を挟んで「自然史博物館」があるがこっちは「まー伏見の科学センターとおんなじ様なもんやろー(ローカルネタすぎる)」ということでパス。
右に見えるのが「自然史博物館」で奥に見えるのがこの次に行く予定の「MuseumsQuartier」
しかし町中像ばっかり。
ということで到着、なぜか「美術史美術館」の写真が無い…
美術館とか博物館といえばなんとなく地味な感じがするが、建物は中も外も宮殿チックに豪華で派手である。
上った階段にはこんなガチムチ彫刻がでーんとおいてあるし、
大理石の階段にはカーペットを止める金具が作りつけるある。
入って直ぐのホールにはクリムトが若い頃に注文されるがままに描いた壁画があるのだが、行った時はそれが修復中ということで足場が組んであり、真近で真横から見ることが出来た。
後にあらゆる伝統や権威に反発して分離派を立ち上げた彼が、世界に名だたる博物館のフレスコ画を、商業主義的で古典的で権威主義的に描いたという意味で珍しい作品である。
足場からの撮影は禁止なので、足場の向かいのテラスからスナイパーのように撮影してみたがあんまりよくわからん…
人だかりの直ぐ正面に見えるのがそうである。
中は広く、2階の絵画コーナーだけ何部屋にも分かれていて、時代や地域ごとにジャンルわけされている。
ブリューゲルやベラスケスの有名どころはそれなりにスペースを作って展示してあるけど、
名前を読んだだけでは余りよくわからないちょっとマイナー目な人の作品などは展示スペースにこれでもかと絵が詰め込んである。
この壁一面に展示してある絵の数はびっくり。デパート併設の美術館なら小ぶりの展示会一回分くらいの量はありそう。
金曜日のお昼前ということもあってか、人も少なく団体客が皆無で、お客さんも絵画好きの匂いが漂っている人が多いような気がしてとても心地くのんびり鑑賞できた。
こんな感じにみんなリラックスして絵を観ている。
有名どころのフェルメールの「画家のアトリエ」でもこの程度の人。
またこんな感じに模写に精を出す人は日本では見られないですなぁ。
こっそり模写した絵とオリジナルをすり替え…いや、なんでもない。
2階の絵はハプスブルグ家がブイブイ言わせてた頃のコレクションだけあって、近代絵画とかは無く、ルネッサンスとかバロックとかそのあたりのが充実している。
まぁ有名どころは公式ページでそこそこ見えるし、ネットで探せばそこらじゅうにあるので、私も写真も撮ってないこともあり省略。
私のページなんかより解像度も高くて綺麗な写真を乗せている人は幾らでもいるので。(たとえばココ)そっちのほうを見てもらえばよろしかろう。
中世は暗黒時代とか言われたり、フランドル派とかのイメージからしてなんかむやみに暗い絵が多い中、ブリューゲルの暗いように見せかけた明るさは良い感じだ。
無闇に細かい「バベルの塔」にはウォーリーを探せ的要素が、
左下にいると見せかけて…実はココとか。
「農民の踊り」には間違い探し的要素が入っている。
足が!足がー!
ルーベンスなんかは大量にあって、イメージ通りこんな感じのピエタとかの宗教画が多いが、
意外に怖い絵が多い。例えばこれなんかは
ピエタのくせに一人は瞳孔の開きを、一人は脈を確認してるのがちょっとリアルすぎるし、
このメデューサの絵なんかはめちゃめちゃ怖い。
私の撮った写真はブレてるのでその怖さがいまいち伝わらなくて残念。
ココやココを見ていただくとその怖さが判ってもらえるに違いない。
もうこの怖すぎるメデューサなんかは、最期にルーベンスの絵が見たいと願ったフランダースのネロ少年に見せてあげれば、パトラッシュもろともお迎えが来たに違いない。
この美術館にはルネサンス以降の絵画が多いわけやけど、私はルネサンスの時期の宗教音楽が大好である。
ルネッサンス以前は宗教的な題材に関する表現は音楽や美術でも定型の決まりきったパターンでしか教会が許さず、
例えば音楽の分野なら勝手に作詞するのは御法度で聖書の字句どおりの歌詞で無いとダメ、とか、絵にしてもこの構図でこういう風に描かないとダメという風に余りにも制約が多すぎた。
しかしルネッサンスになってこの宗教的な作品に対する人々の扱いが変わった。
魔女狩りやらペストやら宗教裁判やら満載の暗黒時代といわれるような目茶目茶な時代で、絶対的な権威であったローマ・カトリックに対して密かに憎しみを抱く人やら、むしろ逆に強く救いを求めた人など色々な人がいたことだろう。
ルネサンスといえば「文芸復興」として当時から見た古典を再評価する運動であったけど、もうひとつの側面としてギリシャやローマの人間中心主義的なスタイルの復興でもあった。
今までの定型句と定型旋律しかなかった宗教音楽が、人間中心主義としての「ルネサンス音楽」になって初めて、作曲家個人が初めて神や宗教との関わりを音楽として表現したところが素晴らしい。
同じように、ルネサンス期以降の宗教画は定型のフォーマットでしか書くことを許されなかった様々な題材を、画家本人の題材との係わり合いというレベルで表現できるようになったのだ。(ちがうか?)
そして、いきなり自由になった人が往々にして無茶をすることが多いように、果敢に挑戦しすぎたというか、今から見てもはっちゃけた宗教画が多くてとても面白かった。
ということで、主に、ルネサンス期というか初期フランドル派あたりのはっちゃけすぎる宗教画を。
美人すぎるサロメ
自分を愛さない洗者ヨハネの首を望んだサロメはキリスト教的には毒婦扱いで一般的には妖艶系美女の扱いだが、このサロメは変におしとやかでうふふな感じ。サロメ!愛ゆえに!
不細工すぎる天使
いやキリストが死んで悲しいのは判るけども、ちょっと天使にしては不細工すぎるように思う。
普通すぎる洗者ヨハネとキリスト
神聖さも聖性も感じないその辺のオッサンみたいなヨハネとキリスト…
額が立派すぎる祭壇画
コレは絵よりも額の方が立派やね…
上の段は聖家族3人、今風に言えばMJC3(Maria Joseph Christ)やね。
下の段は東方の三賢者やね。MAGI3或いはMCB3(Melchior Casper Balthasar)ってところか。
基本的に恋愛禁止なところも同じやね!
って調べたら下の三人は東方の三賢者じゃなかった…聖ヒエロニムス…マニアックすぎる…
人間離れしすぎるキリスト
そら神の子やけども…余りにも人間離れしてるんちゃうか…
突っ込みどころ多すぎる三連祭壇画
ヴェロニカの持つくっきり過ぎる聖顔布も突っ込みどころだが、上に飛んでる天使が黒いので悪魔に見える…
痛すぎる聖セバスチャン
ローマ・カトリックに矢は効かぬ!ということで伝説によると聖セバスチャンは矢では死ななかったらしい。
その割にはめちゃくちゃ痛そう、むしろ矢で死んだほうが楽だったんじゃ…矢ガモ状態の矢セバスチャン…
ポロ…リすぎる聖母マリア
これはびっくり、乳首を出している聖母マリア。こんなんはじめてみた。
アイドルはうんこなんかしない的に聖母マリアに乳首なんか無いんじゃないのか??
左側の天使がめっちゃ見てるし…
同じ顔すぎるハプスブルグ家、宗教画じゃないけど…
Bernhard Strigelはこんな絵を描いて処刑されたりしなかったのだろうか…
と、色々ぶっ飛んだ宗教画やらイコンや祭壇画がたくさんあって面白かった。
館内には世界一美しいと言われるカフェがあったり。
ふんだんにあるソファーが色々充実してたり
と長時間見て回るにも疲れないようになっていて良い感じだ。
売店で美術館グッズとして、マグカップだのクリアファイルだのと一緒に自転車用の金色の自転車用ヘルメットを販売していた。
調べてみたら専用サイトまであったww
誰が買うねんwwしかも玉ヘルww頭だけ百式wwと笑っていたのだが、ウィーン滞在中に一人だけこれを被っている人を見た。ロードバイクに乗ったとてもお洒落さんな女性だった。
(写真はイメージです Lou Mistraou)
こんな感じに良い感じだった。
百式同様、これを被りこなすのはなかなか大変そうだ。
2階の絵画ギャラリーでは見かけなかったけど、売店に地元の小学生の社会見学っぽい団体があふれていた。
そういえば私も小学校の時に京都国立博物館とか京都市美術館とかに授業で連れて行かれたものだ。
当時は絵なんかにほとんど興味なかったけど、そうやって博物館とか美術館に行く習慣がついたおかげで、おっさんになってわざわざ美術工芸品見るのに海外まで行くようになったんだなと思う。
ってことで、次回に続く…
次はミュージアム・クォーターのレオポルド美術館へ。
いやー笑ってもらって嬉しいす!
なんとかウィーン最終日まで完結したいなぁ…
もう何がなんだか、
このウィーンシリーズ
オモシロ過ぎる。
涙腺と腹筋が崩壊する。