イジス写真展 -パリに見た夢/夢想的で詩的なジャーナリズム

またしてもこれも終わった展覧会の話やけど、「イジス写真展 -パリに見た夢- IZIS PARIS DES RÊVES」に行ってきた。
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このIZISって人はリトアニア出身のユダヤ人で、有名どころのフランスの写真家「ドアノー」や「アンリ・カルティエ=ブレッソン」と同時代に活躍した写真家である。
この展覧会ではレジスタンスのポートレイトからパリやイギリスやイスラエルの風景、動物や廃墟からシャガールのパリ・オペラ座の天井画制作風景まで色々なテーマの写真があった。
彼は「夢想家・詩的・非リアリスト」などと形容されるようであるが、むしろ私は同じ時代のフランスの写真家「ドアノー」や「アンリ・カルティエ=ブレッソン」と比べるとなんだか報道写真というかジャーナリズムの匂いがするように感じた。
例えば、フランスは黒人が人口の60%で(あるらしく)そのほとんどが労働者階級である(らしい)。
そしてパリには黒人のホームレスがそこらじゅうに転がっている(らしい)にもかかわらず、映画でも文学でも写真でもパリの中に黒人のホームレスが写りこむことはほとんど無いという暗黙の了解がある(らしい)。
しかし、彼のパリの風景の写真の中にベンチの上で黒人男性と白人女性がイチャイチャしているうらやまけしからん写真があった。
たぶんこれはどっちかというとフランスの中ではタブーに近い現実を切り取った写真じゃないのか?
リトアニアから渡ってきたユダヤ人である彼だからこそ、根っからの白人系フランス人なら無いことにしてスルーしてしまうが、実はそこらじゅうにあふれている現実を示すことが出来ると。
うーむジャーナリスティックではないかー!?


で、ポートレートから動物の写真、スポーツ写真からほとんど盗撮みたいなの、廃墟写真から街やらサーカスの風景など色々な種類の写真を見ていると、自分が何を観て心を動かされたのかを意識することで、自分はどんな写真が好みなのかが客観的に見えて来るような気がする。
私がこの展覧会で気に入ったのはひたすらポートレートだった。
レジスタンスの面々のポートレート、文学者や振付師や舞台女優などのポートレート、パリのカフェでテーブルの上に載っている猫を愛でる紳士、メイク中の結構な年のピエロ、中でもこのエルサレムに木を植える運動に参加する一人の少女のポートレートが一番気に入った。
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どうやら私は人を一人だけ写した写真と猫が写っている写真が好きだったり興味を引かれるようだ。
私がポートレートに興味を引かれるというのは自分でも意外だった。私は今まで人間がそんなに好きじゃないと思い込んでいたのだが実はそうじゃないのかもしれない。なんか新しい自分を発見したようにすら思える。
そして更に私がネコ写真を見るとついつい心惹かれてデレーっとしてしまうのは私がネコが好きということの表れで…うん…それはそのまま!
まぁ、写真に限らずこういった展覧会でまとまった相当数の誰かの本気と書いてマジと読むような表現に触れるということは、その人の内面とか魂に触れるだけでなく、またその人とその人の属する歴史にも触れることであり、そしてなによりもそれらに触れることで反作用として現れてくる自分自身にも触れなおすということである。
「お家に着くまでが遠足」であるのとはまた全く違う意味で、展覧会は展覧会を見終わった時点で終わりではない。
むしろ人にとって展覧会は見終わった時点で始まりなのだ。そう、戦いはまだ始まったばかりなのだ!
ってなんかいきなり連載を切られて中途半端なところでムリヤリ終わらさられたマンガみたいなまとめですな…

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