クヴィエタ・パツォウスカーとチェコの絵本展/新チェコ的とは何か?

美術館「えき」KYOTOで開催されている「クヴィエタ・パツォウスカーとチェコの絵本展」に行って来た。

この展覧会はクヴィエタ・パツォウスカーなる人の作品を中心として、チャペック兄弟などの「チェコの絵本」の魅力に迫ろうとする趣旨のもので、この夏に「クヴィエタ・パツォウスカー展」をやってた「安曇野ちひろ美術館」の全面協力を受けた企画展という感じになるだろうか。

チェコといえばCz75Vz61といった芸術的に美しくて高性能な銃器を作る世界有数の工業国でありながら、

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シュールな文学や映像作品を大量生産する国で、フランツ・カフカやヤン・シュヴァンクマイエル、そしてチェコ版進撃の巨人とも言うべき「ファンタスティック・プラネット」に代表されるような暗くて陰気なイメージがある。

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このチェコの独特の暗さは、血みどろのヨーロッパの歴史の中でずっと紛争の最前線で戦場となりながらも社会体制や領土や宗主国や方向性をコロコロと変えて必死に生き残り存続して来たという、「生き残るためなら何でもする後ろ暗いサバイバル」とも言えるような中欧や東欧と呼ばれる地域の独特のものであるような気がするけど、このクヴィエタ・パツォウスカーの描く作品も、パステルにカラフルでありながらも、やはりただひたすらハイテンションな「ポップ」とは全く違う何者かがあるような気がする。

クヴィエタ・パツォウスカー氏はチェコがオーストリア・ハンガリー帝国から独立しチェコスロバキアとして共和制を敷き始めてほぼ10年後の1928年にプラハに生まれた。彼女が10歳の頃にチェコスロバキアはナチス・ドイツに併合されて消滅し、ユダヤ人であった父を殺された彼女は数年間も学校にも通えず中々にハードな子ども時代をすごした。

そして第二次大戦後にチェコスロバキアはソ連側の東側諸国の共和国として再独立を果たし、圧政の中「プラハの春」で潰された民主化活動は東西冷戦の収束に伴って「ビロード革命」として成就し、やがてチェコとスロバキアと言う二つ民族国家は連邦を解消して分離するわけであるが、その民主化革命と連邦解消を内戦どころか武力衝突すら無く成し遂げる民主的な優しさのようなものも、ただ中欧的な暗さではないもう1つの「チェコ的な特質」と呼んでも良いように思う。

そんな目で彼女の作品を見ると確かにそういう気がしてくるのだが、もう1つ彼女の作品には、明らかにこれが共感覚かと思わせるものがとても多かった。色のついた音符や数字やアルファベットといったわかりやすいものだけではな く、同じ形でまったく別の色の塗り分けられているカラフルなサイを観ていると、色そのものが1つの表現なのだというのが良くわかる。

そして、例えばこんな風に、

 

彼女の描く「面」ではなく「線」にところどころに彼女が内に秘めた狂気のようなものが見え隠れするような気がするのだが、耳無し芳市が経文でやったように、草間彌生がドットでやったように、彼女はそういった狂気を色で塗りぶしてユーモラスなものに転化してしまっているように見える。

フランツ・カフカに代表されるような暗さがいわば「旧チェコ的」なものであるとしたら、グロテスクでリアルでありながらも不思議に暖かくとユーモラスであるといった現代のチェコ絵本の持つ特色は、様々な悲惨な歴史を潜り抜けて最後には円満に民族自決を果たしたチェコの持ちえる「新チェコ的」なものなのかもしれない。

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4件のコメント

  • RSS情報取得できるようになりました。
    これで安心です。

  • RSS表示のテンプレートの先頭行に何も無かったので、おそらく色々と関数やらテンプレートインクルードしているうちに変な謎の改行が入り込んでるようです。
    もう考えるのも探すのも面倒くさいので、RSSテンプレート読み込んで直ぐに、出力用バッファの内容をクリアするようにしてやりましたw

    とりあえずこれで表示されとると思います。

    御大にウォッチされてありがたき幸せですじゃ。

  • お!どもお久しぶりです!
    ソースを見てみると先頭に改行が2つ挿入されてしまってるようです。
    テンプレートのどこかがおかしいと思うのですが、何とか調べてみます…

  • 記事とは関係ないのですが
    RSSフィードの取得でXML パースエラーが発生してしまいます。
    どうしてでしょうか。

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