31日後/レベル7/名も無き

震災から丁度1ヶ月が過ぎて2ヶ月目に入った4月12日、原子力安全・保安院は福島第一原発の事故評価をINES基準の国際指標「レベル7」に引き上げた。
これによってこの福島第一原子力発電所の事故は名実ともに世界ランク同率一位の事故に躍り出たわけであるが、
事故当初はレベル4としていた評価を後にレベル5に引き上げた後、
海外からは最初から6相当と見積もられていたレベルをすっ飛ばしてレベル7ということである。
まるで殉職した警察官のような二階級特進ですな。
ネット上では「スリーマイル以上チェルノブイリ未満のレベル6」という声が多かったような気がするのだが、それをさらに上回る評価を、あの保安院が下したということは事態の大きさと深刻さを物語っているように思うし、
世間的に「なんとなく収束?」みたいな空気を根底からひっくり返す様なインパクトがある。
しかも、すべてが終わった時点で下した評価ではなく、まだまだ事態は進行中であるのだ。
「レベル7まで行ったら戻れない」って宮部みゆきの小説を思い出した。というか、レベル8新設とか絶対止めてほしいですな。
そして、その一日前の4月11日、大阪の会社が福島第一原発での派遣業員を募集していた。
4/11 15:47時点での魚拓 

東北地方のかたのお手伝いをしに行こう!!
福島の原子力発電所での仕事です。
この言葉を聞いてイメージするものはいろいろあると思います。
ですので今回は、~のためと割り切れる方の募集をお待ちしております。
締め切りは4月30日までです。
宜しくお願いします。
職種
清掃作業員、作業補助
雇用形態
派遣社員
求人広告内容
福島県の原子力発電所構内での、清掃作業、作業補助などをお願いします。
防護服など保護具は支給します。
支給した保護具を身につけた上で、現場の指示に従って動いていただきます。
現場作業員のことを考えた上で一日の作業時間を3時間前後とさしていただきます。
給与
日給3万円:一日作業3時間で30000円~です。
採用資格条件
特になし
年齢制限
年齢不問
勤務時間
8:00~17:00のうち3時間が実務
雇用期間
3ヶ月の予定

とある。
期間が三ヶ月というのは、おそらく一日三時間、三ヶ月の勤務で作業員の年間の被爆許容量限度の250ミリシーベルトを超えるということなのだろう。と推測される。
以前の日給一万円程度に比べて待遇は良くなった気がするけど、三ヶ月限定でもあるし、仕事内容や危険度から考えてまだまだ「飛びぬけて良い給料」とは言えないだろうと思う。
で、募集が出た次の日の12日の朝、事故評価を「レベル7」に引き上げる発表を行う前の時点で大阪の会社の募集ページを見ると、すでに「応募多数のため、募集を停止いたしました。」となっていた。
書いてある通りに受け取るとするなら、危険を顧みず原発を何とかするために現地で働きたいという人が一日で多数集まったということになる。
そして彼らは日が明けて世界ランク同率一位のレベル7となった原発事故を収束させるために最前線に赴くことになるのだ。
震災直後に地デジチューナーを買ったということもあり、震災以降良くテレビを見るようになった。
ネットで見ていると非被災者にとっての情報という事で原発事故関連の情報がやたらと多い気がするけど、テレビでは原発事故の報道は少なくそれよりも被災地の悲惨な状況の報道が多いような印象を受ける。
高熱を出して満足な医療も受けられないまま毛布一枚で避難所で寝込んでいる両親が行方不明の女の子、
いち早く非難して助かったものの自分を助けようと家に戻った息子が津波に呑まれて死んで、ずっと「私が息子を殺した」「私が死ねばよかった」と毎日毎時間自分を責め続ける障害を持つ母とか、そんな映像を見ているとなんともいたたまれない。
テレビを見ていると直接的な死傷者が出ていない原発事故よりも、今も進行形で膨大な犠牲者を生み続けている悲惨な状況にある津波や地震での被災者支援のほうが遥かに急務であるように思えてくる。
しかし、そもそも「どちらが急務か?」という問い自体が間違っているのだ。
この未曾有の地震や津波による災害といい、世界ランク同率一位の原発事故といい、本当に現場で被害を受け、そして最前線で戦っているのは名も無き小さな沢山の人と勇者なのだという実感が日を追うごとに強くなる。
そんな名も無き小さな人々を助けようとする、また名も無き小さな勇者の群れは気高く美しい。
しかし、見方を変えれば、本当に率先して事態の収拾に当たらねばならない政府や企業からすれば、個人の抱く自己犠牲や憐憫やヒロイズムの感情すら、構造的に「消費」や「利用」や「中間搾取」の対象としている。ということでもあるように見えてくるのであった。

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