今年も海に行く

その年初めての海に潜るといつも思い出すニーチェの言葉がある。

まことに、人間は汚れた流れである。汚れた流れを受け入れて、しかも不潔にならないためには、われわれは大海にならなければない。

私にとって「海」は、あらゆるものを与え、あらゆる物を奪い、あらゆる対立概念が一緒に交じり合って同時に在るような一つの完全性の象徴のようなイメージでもある。

冒頭のニーチェの言葉を字義通りに受け取ってそれを目指そうとはよもやもう思わないけど、それでも私がずっと「海」に憧れるように、大海のように汚れた流れを受け入れて、しかも不潔にならないあり方は人間存在としてのひとつの憧れではある。

 

海に潜って魚をヤスで突き、

 

地元産の貝を分けてもらい、

 

海水で茹でたスパゲティーを食べながら白ワインを飲んでいると

 

色々な歯車がガッシリ噛み合って今私はここで回っている。ということをひしひしと感じる。

遥か向こうを見ようと目を凝らし、決して届かないながらも、憧れの矢を放つのは、きっと大事なことなのだと思う。

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