世界の終わりに想う事
私はもともあまり夢を見ない(覚えていない)タイプの人間なのだが、先日見た夢は今まで見たことのないタイプの不思議な夢だった。
夢の中で私はどこかの部屋で誰かと喋っていた。
相手や話している内容は全く覚えていないのだが、私は窓に背を向けてその相手と向かい合って何事かを熱心に話していたところ、私を見て話していた相手が突然話し止めて私の後ろに視線をやって不思議そうな顔をした。
私が相手の視線に釣られて振り返ると、窓の外の空高くになにやら光の玉が光っている。月と太陽の中間の明るさのような光の玉が空に浮かんでゆっくりと下降している。
降下する光の玉を目で追いながら、それがいったい何であるのかを考えていると、やがてその光は突然強く光りだし、次の瞬間に強い光と共に弾けた。
その光が自分を包み込む瞬間に、それがNBCR兵器というジャンルを超越した、まったく別の新しい種類の大量破壊兵器であることを理解した。
光りながらゆっくり降下して、最大限に威力を発揮できる高度に達すると発動するようである。
その兵器が発動すると、大気圏内にあるものを洗練された方法で徹底的に破壊しつくすのだ。
それを悟った次の瞬間に、これで世界が終わってしまう事を直感的に理解した。
夢の中では、自分が死ぬことよりも世界が終わる事の方がリアルに感じられたのがとても不思議である。まるで自分が死なないかのように。
世界の終わりの瞬間は妙な安堵と少しの残念さと軽い後悔とちょっとした「やっちまった感」の混ざったような、「これで世界も終わりか…」としか言いようのない感覚であった。
「世界の終わり」に感じられる事は「世界の終わりの感じ」としか言いようがない。
なんの説明にもなっていないが、論理的にも感覚的にも間違いはないのだ。
「世界の終わりの感じ」を深く味わい、世界が終わる事を深く理解して、そして、最期に何かを想おうとした瞬間に目が覚めた。
目が覚めて、まだ世界があることがとても不思議で喜ばしかった。この感覚もとても新鮮だった。
しかし、私が夢の中で世界の終わりの最期に何を想おうとしたのかはもう思い出せなかった。