肉体の軽蔑者の軽蔑者

『ニューロマンサー』を読み終わり、『新訳 ドン・キホーテ 後編』に取り掛かる。
サイバネティクス技術とサイバースペースが取り巻く世界から、異端審問とムスリム弾圧の風が吹き荒れる近世スペインのギャップに違和感を覚える。
サイバネティクとサイバースペースを世界の前提にした『ニューロマンサー』が「サイバーパンク」なら、物語の中だけの話だといわれる高邁な騎士道精神なる理想を推して立てて体現しようとする遍歴の騎士ドン・キホーテ・ラ・マンチャは差し詰め「騎士道パンク」とも言うべきか。
いつの世から見た「現代」も、不正と悪が蔓延っているかのごとくに見えるのはいた仕方ない事であるとはしても、批判精神でもって「現代」を眺める眼がなくして何の進歩であろうか。等と戯言を書いてみる。
前日の夜中に雨の中図書館の返却ポストへ本を返しに自転車で出かけたのだが、まるでふわふわするかのうような自分の体の現実感の無さにかなりドン引きする。
数日間一歩も外に出なかったが故の肉体的な移動と平行の感覚の後ろ向きの順応に、肉体の軽蔑者の軽蔑者たらんとする土偶は身体感覚を取り戻そうと、雨降りしきる寒空の下をしばらく自転車を走らせる。
自転車を操る体が自分に属するものという感覚を取り戻した土偶は安心して家に戻り、また引きこもって本を広げるのであった。

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