人の誤訳のグタグタよ

最近バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」のピアノ編曲版が聞こえてくることが多ったのだが、ふとこのタイトルの意味が良くわからないことに気づいた。
amazon ASIN-B0007INZPCこの曲で一番メジャーなのはこのCDやね。
「主よ、人の望みの喜びよ」ってのは「主よ、人の望み(があることは)喜び(です)」なのか「主よ、(あなたが)人の望み(であるのは)喜び(です)よ。」なのか。それともまた別の意味なのか?
ということとでちょっと調べてみた。


元々この曲はバッハのマリアのエリサベト訪問の祝日の147番の教会カンタータ「口と心と行いと生命」のコラールの一部をマイラ・ヘスが編曲してメジャーになったものやけど、そもそも「マリアのエリサベト訪問の祝日」ってのは、聖母マリアがキリストを身ごもった喜びで主を称えた日の話である。
調べたところによると「主よ、人の望みの喜びよ」ってのは、ドイツ語からの英語訳である”JESU, JOY OF MAN’S DESIRING”を更に日本語に訳したものらしい。確かに直訳やね。
しかし、更にドイツ語の原文を調べてみると”Jesu, meiner Seelen Wonne”ということで、カンマ以前と以後は同格であるから、「主よ、私の魂の喜び(である主)よ」と二回呼びかけていることになるようだ。なるほどこれならちゃんと意味がわかる。
というか、これはこれは洗礼者ヨハネの母エリザベートの前で聖母マリアがキリストを称えて言った台詞、ルカ1・46~55の「マリアの讃歌」、いわゆる「マニフィカト」の「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。」に対応している言葉であろうね。
となると日本語に訳す時に間違えたというよりは、英語訳がそもそも間違っているように見える。
しかし、ここの一番肝心な所を誤訳するとは、しかも原形をとどめないほどに誤訳するのはちょっといただけないと思う。
しかし、世の中にはこんな感じで誤訳がメジャーになったことって沢山あるのだろうなと。

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