『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』ミッシャ・マイスキー弦楽三重奏
2007年10月25日
去年の終わりころに十字屋の視聴コーナーで聴いてたまらんかったCDをやっとちゃんと聴く機会に恵まれた。
弦楽三重奏に編曲された、J.S.バッハのゴルトベルク変奏曲、ミッシャ・マイスキーがチェロ、ジュリアン・ラクリンがヴァイオリン、今井信子がヴィオラである。
グレン・グールドの演奏する「ゴルトベルク変奏曲」は「天一のラーメンはラーメンではなく天一という食べ物」であるように、「グールドのゴルドベルク変奏曲」でしかないわけやけど、この弦楽三重奏はヴァイオリニストのシトコヴェツキーがグレン・グールドの演奏を聴いて感動して彼に捧げるべく編曲したらしく、聴いていると確かにグールドっぽい感じはする。前聴いたアンドラーシュ・シフの「ゴルトベルク変奏曲」はバッハな方向性やけど、この弦楽三重奏はやっぱりグールドな方向性であるように思う。
しかしながら1981年版のグールドの演奏よりも更にテンポがゆったりとしており、演奏も丁寧な印象を受ける。
55年のグールドの演奏時間が38分、81年が51分、そしてこの弦楽三重奏の演奏は80分と時間的にもぜんぜん違う。
グールドはひたすら形振りかまわず内向するような演奏やけど、三人の調和ししつつも刺激しあいつつも軽快さと丁寧さを忘れない控えめでエレガントな演奏はとても良い感じ。第4変奏や第10変奏の微妙なバランスなどどうだろう。そして終わりを惜しむかのような第30変奏から最後のアリアへといたるところはもうたまらん。お風呂で聴いているととてつもなくトリップした。