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2006年5月9日

ポール・ストラザーン『90分でわかるヴィトゲンシュタイン』

元来俺は「10日で覚えるmysql」とか「30日で驚くほどキレイになる」とか言った類の本が好きではない。
なんつーか人が長い時間かかって作ったり、考えたりしたもの短期間で手に入れようとする魂胆がさもしいし、第一失礼やと思うのだ。
とは言ったものの『90分でわかるヴィトゲンシュタイン』てな本を買った訳やけど、この本はイギリスでベストセラーになり、5カ国語で翻訳が出ているほどの人気で、それに第一、古本屋で捨て値の値段に釣られたと言うのもある。
薄い本で90分と書いてある割には30分かからず読了。
ここまで書いておきながら、ほのかにこっそり『論理学論考』や『哲学探究』の明晰な解説を期待していたんやけど…やっぱりそう甘くはないわな…
浅ましいスケベ根性を剥き出しにして買った俺が間違っておりました。そういう本じゃ全くありませんでした。


彼の家がオーストリアのロスチャイルドと言われるほどの富豪であり、夕食にはブラームスが演奏を繰り広げ、軍隊に入り、膨大な財産を放棄し、ホモセクシャルだった。
などと彼の社会的で家庭的な話がメイン。「ヴィトゲンシュタインの思想」というよりは「ヴィトゲンシュタインの生い立ち」についての本。
なんというかこの本読んでてヴィトゲンシュタインって、常にとても必死なのがよく伝わってきた。
激しく暑苦しく息苦しく切迫感を感じる。中島義道の言う「哲学病」ってやつか?
論理一本槍で哲学の解体に命をかけ、それでいて宗教的な人間でもある。
哲学を生きるか死ぬかの問題に捉えていない人間を軽蔑し、常に自殺の事を考えていた。
まぁ、スケールは天と地ほどの差はあれ、その辺は何となく俺もシンパシーを感じる。
そういう人がいたってのは何となく安心できるし、素直に尊敬できる。
ヴィトゲンシュタインの生涯について手早く、それこそ90分以内で学ぼうとするなら上手い事まとまってる本やと思う。無駄に文章が長くなる傾向のある俺からすれば、もう驚異的なまとまり具合。
それから哲学というのになじみのない人にとって、哲学者というのがどういう人種かてのを理解するにも良い本やと思う。
哲学者てのは傾向的に端から見ればキティ…にしか見えんという…
その辺がちゃんとひしひしと伝わってくるはず。
ただし、 読んだところで彼の言いたかった事はこれっぽっちも理解できない。
この本の中でヴィトゲンシュタインの思想とやらへの踏み込みは一切無し。
作者からすれば 「語り得ぬものには、沈黙しなければいけない」と言うことなのだろうか?

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Comment & Trackback

この手の本はその昔「1週間で出来る○○」などという本を買っては全く理解できずに終わった者としては同じ失敗を繰り返すまいと思うのですが、またつい手にしてしまいます。
成長してないとゆコトでしょうか・・・・
といいますか本日のブログは
>「語り得ぬものには、沈黙しなければいけない」
この一言がいたく響きました。

>といいますか本日のブログは
>>「語り得ぬものには、沈黙しなければいけない」
>この一言がいたく響きました
確か、このヴィトゲンシュタインの言葉は、哲学(というか論理)の取り扱える範囲を定義する文脈で語られたはずです。(詳しい方解説キボン)
ということなので、これを日常生活に適用すると常時沈黙しっぱなしになるので、あまりお気になさらないほうが良いかと。

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