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2012年12月5日

津波からの生還 東日本大震災・石巻地方100人の証言/星が綺麗

三陸河北新報社「石巻かほく」編集局による『津波からの生還 東日本大震災・石巻地方100人の証言』を一気読みした。

この本は石巻地方で津波に襲われながらも何とか生き残った人々に震災直後の様子を語ってもらったテキストが100人分収めてある。

震災によって本社ビルが被災した三陸河北新報社による日刊の地域紙「石巻かほく」が震災の3ヵ月後から約9ヵ月にわたって100回連載した「私の3・11」がほぼそのまま掲載されているものであるらしい。

震災後に震災関連本として出版された本は、何かしらの結論や教訓や責任の所在を急いで問い詰めようという姿勢の本ばかりだったような気がしていまいち読む気がしなかったのだが、「震災関連書籍バブル」も落ち着いてきた今年の7月終わりに出たばかりのこの本は、現場の生の声だけをひたすら集めてあるというところに興味を引かれた。

以前から、震災直後から生き残った人のインタビューで「なぜ助かったのか?」的な問に対して「たまたま」「運が良かった」というひたすら謙虚な答えばかりだったのがずっと印象に残っていたのだが、この本を読んでも生き残った人の殆どは、たまたま目の前に流木やら家が流れてきたとか、たまたま何かの影に流されて難を逃れたとか、たまたま助けてもらったとかそういった偶然によって生き延びたような印象を持っているようだった。

そして意外だったのは「絶対生き延びる」と思っていた人だけでなく、何度も「もうダメだ」とか「こうやって死ぬのか」などと諦めてしまった人も多く生き残っている場合が多いということだった。

この本を読む前は生き残った人には生き残る事になる共通するなにかしらの属性があるに違いないと思っていたけど、結局そんなものは全く無いんやなと思うようになった。むしろ、生き残ったのは「たまたま」「偶然」と思える人だからこそ生き残ったとも言えるかも知れない。

しかしそれでも、津波に縁の無い地域に住んでいる私からすれば、殆ど全員が、津波が来る前には川が引くとか二回目がヤバいとか、高台に逃げるとか、避難はてんでんことか、蓄積され継承された津波についてのそれなりの知識とそれなりの対処法をあらかじめ知っていたのにはちょっとびっくりした。結局、何かしらの脅威に対しては、それに関する一般的な知恵があった上で「たまたま」とか「運が良かった」と言えるような気もする。

そして、この本を読むまで全く想像しなかった事でとても印象に残っているのは「震災の日の夜は星が綺麗だった」と言っている人が何人かいたことだった。

確かに地域一帯が津波に襲われて崩壊して全くの暗闇になってしまえば星はいつもより綺麗に見えるに違いない。

フランクルの『夜と霧』で強制労働での行進中に美しい朝焼けを見て、その美しさに感動するって話を読んでそんなもんかなーと思っていたけど、なるほど水浸しの体で沖に流されてゆく屋根の上で仰向けになって寒さで動けない状況で徐々に薄れてゆく意識の中で星が綺麗だと思える状況はなんとなく想像出来るような気もする。

地震と津波によってあたり一帯が徹底的な破滅に見舞われ、自分や愛する人がリアルに死の瀬戸際にある状況で「星が綺麗」と思える精神性を持つ事の出来る人間なる生き物は、やっぱり万物の霊長だぜーと思ったのだった。

 

この本は震災を「生者」が語った本であるけど、この他に震災での「遺体」をめぐる人々の話、そして震災後「死」でなく「死者」こそが語られるべきだとうい本を読んだ。また追々感想を書いてゆく予定。

 

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