ミハイル・カラシニコフとソ連/カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男

この年末年始で色々な方が亡くなったけど、結構ビックリした割りに世間的には殆ど注目されていない人の一人に、史上もっとも大量に製造され拡散している小銃である「AK-47」の設計者である「ミハイル・カラシニコフ」氏がいる。

 

彼が設計し、彼の名が冠せられたAK-47(Avtomat Kalashnikova-47 、47年式カラシニコフ突撃銃)は第二次大戦での対ドイツの自動小銃として着想され、大戦後にソ連に正式採用された後は冷戦当時の東側諸国のシンボル的な銃器となり、冷戦構造が終結して東側諸国で密造されたものが大量に流出し始めた後は、メンテナンスフリーで砂漠からジャングルから極寒地域までどんな環境でも問題なく動作するシンプルで誤動作が少ない素晴らしい性能からゲリラやテロリスト達がこぞって使い、今や「小さな大量破壊兵器」「世界で最も多く人を殺した兵器」「貧者の兵器」など呼ばれることが多い。

ミリタリー好きにとっては「カラシニコフ」とか「AK」なる単語は一つの頂点とも言うべき言葉であるけど、殆どの人は「カラシニコフ」という名前をなんとなく聞いたことがあるような気がするくらいのものだろう。

時々国際問題とか内戦とか民族対立などといった文脈でこの単語が登場するくらいだ。

私もミリターリー好きの端くれとしてこのAK-47を模したBB弾を発射する電動ガンを持っている。(でもスリングだけは実銃用の本物だぞ!)

彼のデザインしたAK-47がいかに素晴らしい銃であるかを詳細に知っている人でも、冷戦時代はその存在そのものが国家機密であったカラシニコフその人について、いかなる人生を歩んできたのかそれほど知っている人はいないのではないだろうか?

ということで、私も彼のことをほとんど知らなかったので彼の死を機に、彼について書かれた本を数冊読んでみた。

「カラシニコフ」については色々な切り口で沢山の本が出ているが、彼個人の一生について知るなら、『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男』が一番良かったような気がする。

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これはカラシニコフ氏の娘の友人による氏へのインタビューを「自伝」形式に編集したもので、彼がソ連時代に語っていたという対外的でオフィシャルな作られた経歴ではなく、彼自身がソ連時代には誰にも語ることが出来なかった話が多く掲載されており、彼が少年時代に革命によってシベリアに強制移住させられた少年期や脱走して銃器設計者となる顛末の話などはこの本ではじめて知った。

彼が少年時代にあれほどレーニンに辛酸をなめさせられたにも拘らず、彼がどれほど祖国とレーニンとマルクス・レーニン主義を愛し自らを祖国に捧げてきたかのを誇りしにしているのが印象的だった。

祖国の英雄となり、数多くの勲章を授けられた彼であるけど、彼は自分の作った銃がどれほどの悲劇を生み出したのか知りつつ苦悩していた。

そしてこの本で彼は祖国と家族と平和と愛すると同じように「銃」を愛し、故郷と家族と自身の少年時代を無茶苦茶にされながらも、レーニンと共産主義を敬愛するような、一見矛盾する感覚が彼の中に同居しているのがとてもよく分かったし、まさにそこにこそ彼の人間身がとても表れているように思えた。

カラシニコフ氏は様々な矛盾を抱えつつ、崇高な目標を掲げて平和を目指しながらも結局はうまくいかずに崩壊してしまった「ソ連」をまさにその生き様で表現しているような人物であるような気がするであった。

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