宮崎駿とよだかの星と自己矛盾

最近公開された宮崎駿の「風立ちぬ」のテーマとして

兵器である戦闘機などが好きな自分と戦争反対を訴える自分という矛盾を抱えた宮崎駿自身が投影されている。

という話がある。

私も自分自身についてこれと同じようなことをよく考える。銃が好きだからといって、戦争とか人殺しを肯定しているわけでは決して無いのだ。

まぁこの私くらいのライトな趣味の域を出ない程度なら深刻性はゼロであるけど、『よだかの星』のように小さな虫たちを食べて殺生をしなければ生きてゆけない自分自身に耐えられなくなって生きる事に絶望してしまうレベルになってしまえばかなり深刻である。

若い頃はとかく「社会や世界の矛盾に怒りを覚える自分自身が自己矛盾を持つ存在である」などといった無闇にこんがらがってどこが結び目か問題かなのかすら分からない事で真剣に悩んだりもするけど、年をとるごとに自己矛盾が一向に解決されないどころかますます酷くなってくるようにすら思える自分を生きているうちに、いつのまにか、結局自己矛盾に対してどちらの側も完全に説明できる単一の答えなど無い。というのが経験的に分かってくるのだ。

精神病や神経症が病気として治療対象とみなされるのは日常生活をおくるのに支障が出たり、自分や周りが苦痛を感じている事態が発生するからで、厳密に言えば精神的な異常と普通の状態に明確な違いは無く、程度の問題に過ぎないという。

同じようにこの自己矛盾も人間にとってはむしろ常態で、日常生活に支障が出たり、自分や周りが苦痛に感じた時点で何らかの程度問題として扱うべきものなのかもしれない。無闇に自分自身の奥を掘り返していじくりまわすものではないのかもしれない。

それでも私は、自己矛盾の一切を否定して切り捨てて完全な一貫性を維持して生きている人よりも、自身の自己矛盾に正面から向き合って悩み苦しみもがきつつ生きている人の方が魅力的に見えるし、夜空に青白く光るく「よだかの星」のように輝いて見える。

夜に輝く星は、ある時に人の道しるべとなり、またある時には暗闇の中にいる人の心を慰めるものなのだ。

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