オサンは『人生がときめく片づけの魔法』でときめくか?

以前『ダーリンは外国人』とか『ツレがうつになりまして。』などのエッセイ系漫画が映画やドラマになっているのを知り、エッセイが映画化できるのかととても驚いたものだが、最近『人生がときめく片づけの魔法』なる片づけ本がドラマ化されたと聞いてめちゃくちゃ驚いた。

片付け本がどういうドラマになるのか全く想像も出来なかったのだが、どうも聞いてみると「片付けコンサルタント」なる著者の仕事を軸にした話らしい。

なるほどたしかにそれならドラマにしやすいだろうが、しかし、そんなことよりも著者が「片付けコンサルタント」なる仕事で生計を立てている事の方が驚いた。

自分の興味をひたすら追及し、今まで世界に無かった生き方を切り開く人は人類にとって大きな役割を果たす人であると常々私は思っていることは以前にも書いた

魚好きをひたすら極めてゆくことでさかなクンとなったさかなクン閣下や、ゲームをひたすら極めてプロゲーマーなる道を切り開いた梅原大吾同様にこの「片付けコンサルティング業」なる道を切り開いた「こんまり」氏にとても興味を持ったのだ。

といういことで、なんとかオフで叩き売られていた『人生がときめく片づけの魔法』を買ってきて読んでみたwオッサンやけど。

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著者の「片付けコンサルタント」なるこんまり氏は小学生の頃から「片付け」が大好きで、オレンジページとかの系統の本を読み漁りつつ片付けとか収納とかの事ばかりを考えて過ごし、自分の周りをひたすら片付けてきたらしく、ついには「片付け」を仕事にしてしまった。

氏は自身を「片付けの変態」と自称するが、その本の中に綴られる氏の半生と片付けに対する情熱はまさに

超人を目指して飛ぶ一本の矢、憧れの熱意

としか言いようがない。

氏の言う「片付け」に関しての話は、部屋の片づけを方法論だけで述べられるのではなく、いらないモノを捨てる片付けの対象がモノだけではなく人間関係や人生にも及び、片付けは生き方に直結する自己実現に密接に関わる問題として捉えているのはこんまり氏以前の「断捨離」と同じ方向性である。

しかし「断捨離」が捨てるモノとそうでないものを区別する基準が「過去でもなく未来でもなく今私にとって必要か」というクールでドライな視点であるのに対し、この本ではその基準が「手に取ったときにときめくかどうか」とされている。

断捨離の「今私にとって必要か」という基準は分かりやすいようで実はとても分かりにくい。頭で考えれば考えるほどモノに対してもヒトに対しても今必要かどうかますます分からなくなってくるし、そもそも何かに対して「必要だから残すか不必要だから切り捨てるか」を判断しようという視線を向けることそのものに違和感がある人が多いのではないか?

まいっちんぐカント先生も

汝の人格やほかのあらゆる人の人格のうちにある人間性を、いつも同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ

と仰っておるではないか。

それに引き換えこんまり氏のいう「手に取ったときにときめくかどうか」という基準は分かりにくいようでいて実はとても分かりやすい。

とても気に入っている工具や食器や本やガスガンを手にした時に、「ときめき」は「わが上なる輝ける星空とわが内なる道徳律」より自然と湧き上がってくるのだ。

そしてこんまり氏と「断捨離」のもっとも大きな違いは「モノ」に対する態度であるように思う。こんまり氏は捨てられることが決定されたモノでもそうでないモノに対しても人格を認めるような誠実な態度で接しているように見える。

コンラート・ローレツが動物への過度に擬人化された解釈が本質を歪めて見てしまう危険性を指摘していたように、この本でのモノに対する擬人化に一歩間違えればスピリチュアル系的な危うさとか怪しさに傾く危険性が感じられるが、しかし、それでも、こんまり氏のモノに対する敬意と熱意はモノ好きな私にはとてもよく理解できる。

「モノ」どころかオブジェクトとしての「ヒト」の人格をも奪って要不要を判断するかのように見える「断捨離」にどこか違和感を抱いていた人たちも、この「モノの人格を認める敬意」をもったこんまり氏の見方は受けいられるのではないだろうか。

とはいえ、人生は「ときめき」を感じられるものだけを身近に置き、「ときめき」を感じる相手とだけ接し、「ときめき」を覚える事だけをしてゆく訳にはいかない。と誰でもが思うだろう。

それは1つの理想像であり、1つのユートピア論であり、同時にそんな世界は「どこにも無い場所」でもある。

こんまり氏がこの本の中で友人や家族のものに手を出さず「自分の部屋」だけを片付けるべきだ主張するように、せめて自分の部屋だけでもその理想に近づけてゆこうとする事そのものに意義があるのかもしれないな。

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