ジャン・マリー・ギュスターヴ・ル・クレジオ 『歌の祭り』

amazon ASIN-4000222023ジャン・マリー・ギュスターヴ・ル・クレジオの1997年にフランス語で発表されたものを翻訳して2005年に発表された、『歌の祭り』を読んだ。
このル・クレジオって人は、村上春樹が取ると噂されていた2008年度のノーベル賞を受賞したフランスの作家である。
1963年『調書』でデビューしてから、『発熱』(1965年)『大洪水』(1966年)などの初期の作品は言語実験的なものだったけど、1970年代半ばくらいから中南米への興味が高まって来たのと同時期に、いわゆる「後期」と括られるような平素でシンプルな文体やスタイルに移行して行ったという事らしい。
この本はそんな「後期」に属するもので、アメリカ大陸の先住民、インカやアステカなどのインディオの文化と北アメリカのアメリカ・インディアンの文明や神話を語る事で、彼らの文化が如何に自然と一体化した宗教感と世界観を持っており、それがどれだけヨーロッパのものと異なっているか。という話であった。
前半はちょっと退屈やったけど、後半は直前にルドルフ・オットーの『聖なるもの』を読んだせいもあり、「ヌミノーゼ繋がり」ということでとても面白く読めた。


マジックリアリズムのイメージがあった中南米文学やけど、この本は小説ではなくノンフィクションやったので、そんなものは毛ほども感じなかった。
それでも、あの世とこの世と現実と非現実が入り混じったインディオの文明がマジックリアリズムのベースになっているんやなぁと妙に納得した。
ヨーロッパ的プロパガンダでただの野蛮人と言う事にされていたインディオやインディアンの文明が如何に高度で、如何に成熟した社会システムと宗教観を持っていたかと言う事が良くわかった。それに引き換え金を取るだけの為に文明全てを破壊し尽くしたヨーロッパ人の如何に野蛮な事か。
しかし、この本を読んでも、この人のノーベル文学賞を取るほどの凄さと言うのは良く伝わってこなかった。、ノーベル文学賞の受賞理由「ヨーロッパ文明への批判的な視点と詩的な文章」の「ヨーロッパ文明への批判的な視点」というのはとても良く伝わってきたけど。
やっぱり彼は小説家なのでノンフィクションではなく、小説を読まんとダメなのだろうと。
でも、前期の代表作『調書』やはことごとく絶版になっているので参ったなぁ。図書館にも無いし。

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