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2009年6月8日

『聖女ヒルデガルトの生涯』 ゴットフリート修道士

この本はヒルデガルドと同時代のゴットフリート修道士が書いたヒルデガルドの伝記的な『生涯』と呼ばれる本の翻訳であるけど、その『生涯』だけでは文章としての量はそんなに多くないので、それに加える形で訳者がヒルデガルドについて書いた文章と合わる形で構成されている。
1147年にヒルデガルドの幻視が文章として表現された『道を知れ』が教皇のお墨付きを受けて公表を許可されたことにより、一躍有名人となったヒルデガルド自身に興味が向いたのは当然の流れであろうし、そんな要求とそれに答える使命感から書かれた本であろうと推測される。
発行は1998年であるけど、オリジナルはヒルデガルドがまだ生きていた1173年から執筆されたものであり、後の人々がさまざまな資料から研究、再構築したヒルデガルド像ではなく、当時のヒルデガルドを直に知っている人たちが書いているというところが現代にとってのこの本のポイントであろう。
この『生涯』がヒルデガルドと同時代に書かれたものだということで、ヒルデガルド研究の一次資料的な意味合いを持つ書物であろうけど、『生涯』自体を読み物として扱えば、先に読んだ『ビンゲンのヒルデガルト―中世女性神秘家の生涯と思想』の方が面白く読めると思う。


ヒルデガルドが幻視を見て、彼女がそれを世界に語らないで自分の中で留めていると神が彼女に痛みを与えて世に公表するように要求した。というのはヒルデガルドとその幻視について語る上での重要な要素のひとつであろうけど、この『生涯』はその「痛み」がどれだけ強烈でつらいもので、どれだけ長期にわたってヒルデガルドの全生涯にわたって影響を与え続けたかについてやたらと書かれていたような印象を受けた。
この本が書かれたヒルデガルドの時代の神は、新約聖書的な優しい父ではない旧約聖書的な怖い神であり、いわゆる敬虔だけでない畏怖も感覚も強い「ヌミノーゼ」な神であったのがわかるような気がする。
ヒルデガルドに関する本を二冊読んだのでもう予備知識はありということで、次はヒルデガルド自身の手による『道を知れ』を読もう。

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