松本仁一『カラシニコフ』『カラシニコフⅡ』/カラシニコフは失敗国家でいかに利用されるか

昨日ミハイル・カラシニコフ氏の死去をきっかけに「カラシニコフ」関係の本を数冊読んで、その中から「カラシニコフ氏」本人に関する本の一冊についてい書いたけど、今日は人としての「カラシニコフ」ではなく、銃としての「カラシニコフ」をテーマにした本について書く。

朝日新聞で連載されていた「カラシニコフ」を単行本化した、この松本仁一『カラシニコフ』『カラシニコフⅡ』の2冊である。

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この本はアフリカ、中東、南米などの無政府状態になったり無政府状態になりつつあるいわゆる「失敗国家」の周辺地域で「カラシニコフ」がどのように流入し、どのように使われ、どのような悲劇が引き起こされているか。という事についてのレポートである。

「失敗国家」を見分ける簡単な基準として、「警察官や兵士の給料をきちんと払えていない国」と「教師の給料をきちんと払っていない国」の2つがあげられるらしい。

つまりは「治安」と「教育」が国が国家として成り立つために最低限死守すべきラインということになり、この本の中で出てくる話はその「治安」と「教育」のいずれか、或いは両方が崩壊した地域での話となる。

どちらの本にもAKを握り締める少年が表紙になっているように、この本には子どもの頃から武装組織の兵士として生きざるを得なかった、映画「ブラックホークダウン」でお馴染みのモガディッシュの少年兵や、自衛のために銃の扱いを習得しなければいけない南米や中東の少年などいわゆる「少年兵」や「少女兵」の話が沢山掲載されている。

少年兵や少女兵は子どもの頃から銃を持たされて日々戦闘行為や略奪行為に明け暮れるわけで、少年少女兵の存在そのものがその地域の治安と教育の崩壊を示しているということになるのだろう。

この本では国家の指導部が自分たちの利権争いにのみ始終して延々と続く内戦を続け「国」としての体裁に全く気をかけず「失敗国家」となるアフリカにありがちな事例だけでなく、NATO軍が革命軍を支援して独裁政権を倒した後に今までは独裁政府の武力によって保たれていた治安が当然崩壊して治安が劇的に悪化する中東や南米の事例もあり、治安と教育が崩壊するとどういうことが起こるのか、そして国家が崩壊するとはどういうことかが良くわかる。

読んでいるだけでどんよりしてくる事例ばかりのなかで、宗主国の強制した国境線を度外視して、PKO軍にも頼らず地域に根付いた部族制度を元に治安と教育を回復した「ソマリランド」のすばらしい事例が救いの光明のように見える。

「カラシニコフ」をキーワードに読み始めたけど、マクロな視点では国家とか平和とか国際支援とか、マクロなところでは人間の欲望とか暴力とかについて中々考えさせられる本であった。

そういえば、今でこそテロのイメージのある「カラシニコフ」やけど、昔は資本主義からの独立や開放といった共産主義革命のイメージとして捉えられてたこともある。

昨日紹介した『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男』といいこの本といい、朝日新聞社はやたらカラシニコフに関する本が多いような気がするのは、もしかしてそういうわけかもしれないことはないかもしれないことはないかもしれない?

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