梅原大吾『勝ち続ける意志力』/窓際のさかなクン
ちょっとでも格闘ゲームを齧ったことのある人なら誰もが知っている、世界的に有名な、日本で始めて企業とスポンサー契約を結んだプロのゲーマーであり、世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマーとしギネス認定された梅原大吾が書いた『勝ち続ける意志力』を一寸したきっかけで読むことになったのだが、とっても面白かった。
彼がプロのゲーマーであるのは知っていたけど、それがかの有名な「背水の逆転劇」から5年後、しかも一度ゲームを止めた後だったとは全く知らなかった。
彼が一度ゲームから離れ、それでも自分が余りにもゲームが好きだということに気付き、再び自らの全存在をかけてゲームに打ち込み本当のプロとなってゆく様はとても感動的だ。
誰も歩んだことの無い道を一人自ら切り開いてゆく人間は本当に素晴らしい。
このウメハラといい、わが敬愛するさかなクン閣下と言い、ただ何かしらを極めて創造者となるだけでなく、自らの存在すら今まで世界に無かった生き方をするモノとして作り変えてゆく彼らのような人間は、自らだけでなく人間存在の全く新しい可能性の扉を開き、人間存在そのものを前に進化させる超人でもあると言っても良いだろう。
先日生まれて初めて『窓際のトットちゃん』を読んだのだが、周りから非難されようと世間の価値から否定されようとも、もひたすら自らの興味を追及するトットちゃんとこの梅原大吾がとてもシンクロして見えた。
好きなことがあるのは幸せなことだ。
自分の気持ちをひとつの対象に100%向けられるのは幸運だといえる。才能があるとか、努力家であるとか以前の問題で「俺はこれが何よりも好きだ!」と言い切れるとするなら、それはすごく恵まれていることだと思う。
とウメハラは言う。そう、多くの人は趣味も無くただぼんやりと暇つぶしながら、隙間を埋めるように日常を生きている。そんな中でただ好きなことがあるだけでなく、「やりたいことが多すぎて困った!」などと嘆くのは、苦しみでも呪いでもなく、恵みであり祝福でもあるのだ。