吉永良正『「複雑系」とはなにか』/複雑系は燃えているか?

最近の本読みテーマはちょっと前に流行った「複雑系」ということで一冊目に読んだのがこの本、吉永良正著『「複雑系」とはなにか』である。

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「複雑系の本を読もう」と思っていたけど、この本を読み始めて、そもそも私は複雑系とカオスの違いを全くわかっていなかったことに気づいた。

読む前は「複雑系」と「カオス理論」をほぼ同じもので、カオス理論が扱う系が複雑系なのだろうと位にしか思っていなかったのだが、単純な法則性を持つ単要素が複数集まった集合が全体としてランダムにしか見えない複雑な動きをする系が「複雑系」で、その中の一つでその単純な要素が余りにも厳密で細かすぎて少しの誤差が経過と共に大きな誤差となり全く予想できないのが「カオス」ということか?

そして、この本を読むに至った漠然と知りたいと思っていたモノというかコトを指すものが複雑系=カオスなのだと思っていたけど、それはそもそもどちらでもなく、複雑系の中で「複雑適応系」と呼ばれるものだった。

単純な法則性を持つ単要素が複数集まった集合が全体としてお互いにフィードバックを受けながらとても複雑な組織性や方向性を持って統合されていく系が「複雑適応系」で、分子や生理学はもちろん、経済的な動きから生態学的な動きやら政治的な動きまで扱うことの出来る系ということになる。

久しぶりにこういう類の本を読んだせいかどうかわからないけど、ずっと「ぬぉぉ!」と興奮しながら読んでいた。 文系と理系への分裂から始まって余りにも細かく細分化されてしまった研究領域の多くのものが「複雑系」の考え方の同じ系で同じ言葉で語れるってとこ ろが最初に書いてあり一気に引き込まれ、最期のほうにはニーチェやらメルロ=ポンティの話も出てきて、複雑系を現象学として捉えるようなことが書いてあり 我が内なる中二病心がうずきますなぁ。

この本はその「複雑系」の生まれてきた「サンタフェ研究所」をはじめとする歴史と、複雑系の扱う複雑適応系と非線形なカオスについて主に書いてあったという感じであるが、著者の吉永良正って人は大学で数学と哲学の両方を修めた人であり、文系と理系を同じ言葉で語ったり同じ舞台に上げるという事に関して並々ならぬ熱意を持っているだろうと思う。

この本がどちらかというと科学的なものを扱う方向性を持った本の割にやたらと熱く感じるのはそのあたりの著者の熱意もあるに違いない。

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