ベルナール・ウェルベル『蟻』 『蟻の時代』 『蟻の革命』

ベルナール・ウェルベルの『蟻』『蟻の時代』『蟻の革命』を一気読み。
それぞれ3冊が連続した物語になっており、「蟻」と「人間」の世界、その二つの世界を説明し補完するような架空の書物「相対的かつ絶対知のエンシアクロペディア」からの引用、と三つの物語から構成されている。
フランスで科学雑誌の記事を書いていた著者が、蟻が好きで好きでたまらないという情熱を全て傾けた末に生み出されたこの物語のメインはやはり蟻の世界。
科学的根拠に基づいたSFとはいえ、単なるおとぎ話やハリウッド的活劇に終わらない。
これは面白かった。面白すぎる。
内容を要約するにも長大な物語であり難しいけど、
がんばってネタバレなしに書いてみると…


amazon ASIN-4042915019amazon ASIN-4042915027amazon ASIN-4042915035伯父であるエドモン・ウェルズの残したアパートの地下へと続く扉の向こうに消えた男を追って、その妻、息子が次々と姿を消す。救助に向かった警察、消防もただ一人発狂してしまった男を除いては誰も戻らなかった。
同じ頃、赤アリ連合の一翼を担う城塞都市ベル・オ・カンが冬眠から目覚めた。食料調達の為に旅立った遠征部隊が瞬時に壊滅し、唯一の生き残りである若き雄アリ327号は敵対勢力の何者かが新兵器を使用した事を確信する。
都市に戻った327号は女王ベロ・キウ・キウニに新兵器の存在を進言するも取り合われず、有性アリ56号、兵アリ103683号と共に独自の調査を開始したものの、新兵器の謎を探る三体に都市に潜んだ暗殺者たちが次々と襲い掛かる。
小型アリに制圧された連合国を解放するための軍事行動である、戦車、細菌兵器の新兵器がふんだんに投入された「ケシ丘の戦い」に参戦した103683号は新兵器の謎を求めて地の果てへと旅に出発し、婚礼飛行の後に56号は女王シリ・プー・ニとなる。
この二体のアリ103683号と56号を軸に新兵器をめぐる謎は急速に動き出す。新兵器の背後には一体何があるのか。城塞都市ベル・オ・カンとアリ達のの運命は。そして56号と327号のロマンスの行方は。
といったところまでが『蟻』の内容であり、次の『蟻の時代』は
科学者ばかりが狙われる連続密室殺人事件が起こる。死因が「恐怖による心停止」であるこの事件の謎を、反目しつつも惹かれあう敏腕警視メリエスと記者であるレシティアが追い始める。
不穏な動きを見せた城塞都市ベル・オ・カンを占領して制圧し、ニ王朝333代女王となったシリ・プー・ニは最大の敵である「人間」を絶滅させるべく「十字軍」を編成した。
地の果てから帰還した英雄103683号に率いられて進軍を開始した「十字軍」は諸国の多種の昆虫たちを打ち負かして編入し、様々なテクノロジーと新兵器を得て膨大な数に膨れ上がっていた。
一方「神」「自己」などの抽象概念を知った城塞都市ベル・オ・カンのアリ達の間で宗教が生まれ、宗教、哲学論争の勃発により対立と迫害が激化する。都市だけでなく「十字軍」内にも飛び火したその宗教論争は軍隊の秩序と士気を大きく乱すこととなる。
十字軍、宗教論争、連続密室殺人事件、そして103683号の運命は驚くべき結末を迎える。
最後の『蟻の革命』は
世の欺瞞や醜さにうんざりしている孤独な少女は森で「相対的かつ絶対知のエンシアクロペディア 第3巻」を拾いそれに没頭する。反抗心の塊のようだった少女は七人の友人を得て、拾った本を読む事でどんどん心を開き変わってゆく。
十字軍の遠征の後、人間と争うのでなく対話と協力が必要だと考えた103683号は、遠征中だったベル・オ・カンの特殊部隊12体のリーダーとなり、共に故郷を目指す。寿命が尽きようとする103683号は延命の為に苦心の末手に入れたスズメバチのローヤルゼリーで女王候補の有性アリへと変化し、小型アリに包囲された十字軍の生き残りの仲間を救うため、また自らの主義を守るために、封印された禁断の兵器「火」を使う。
芸術、技術、著述などのセクションを受け持つ12の側近のサポートの下でニ王朝334代女王となった103683号は、自己、他者、愛、憎しみ、神、自然、世界などの新しい概念に悩みながらも、恐ろしい威力を持つ火の使用と王国に混乱をもたらす宗教団体への対処を決意する。
国内を平定した103683号は数百万の様々な昆虫でなる軍勢を引き連れ、悲願であった人間との対話の大使として出撃する。
三巻を通して、交互に語られるまったく別の物語、フォンテーヌブローの赤アリ都市とそこから6キロ離れたエドモン・ウェルズのアパートを中心として始まった人間たちの物語はやがて交わり一つの物語へと収束してゆく。
と言う感じでいかにも面白そうやし実際面白かった。
宗教問題、核問題、環境問題、戦争、社会体制といった社会問題、そして性、愛、存在論、生きる意味などの古典的な哲学的命題、と掘り下げるまでもなくいくらでもテーマは満載されているけど、そのテーマを掘り下げるのが蟻だと言う事で説教臭さとか押し付けがましさがなくなっている。
しかし、それよりも何よりもストーリーテリングの巧みさと赤アリ王朝の年代記に酔いしれるべきであろう。
昆虫好き、いきもの好き、人間嫌いの皆様はもちろんの事、アリとシロアリとゴキブリの区別がつかない様な人にも、自信を持ってお勧めできる本である。

2件のコメント

  • 名前だけは知っていた作家です。
    読んでみたくなりました。^^
     

  • コメントありがとうございます。
    とても面白く考える事も沢山ある本でしたのでぜひお読みください。
    それに蟻の恋愛小説は私が知る限りこの本だけです。
    しかし、名前だけとはいえ、マニアックな作家ご存知ですなぁ。流石と言うべきかやはりと言うべきか…です。

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