鈴木健『なめらかな社会とその敵』/ムラ社会的全体主義社会的ユートピア的ガンダーラ

amazon ASIN-4326602473 某内田先生がブログでべた褒めしていてとても興味を引かれたので、鈴木健『なめらかな社会とその敵』を読んだ。

300年後の社会に対して何らかの基礎付けとなるであろう貨幣システムと社会システムと法や軍事のシステムの3つのシステムを提案する本である。

評価とか貢献度とかの価値が動的に伝播することで後払い的に自身の購買力としてチャージされたり支払われたりするPICSYなる貨幣システム、

個を分割することで委任や票の分割や立候補をパラーメーター配分のように動的な投票や提案行為を行うDivicracyなる分人民主主義、

何かしらに対する態度を敵味方、好き嫌い、善悪などの二分方ではなく、たとえば何かしらに対する態度を嫌い1好き2敵4感心3などというようにアナログに評価する構成的社会契約論、

という三つの社会システムを採用することよって未来の世界がどのようにすばらしい世界になるかというところがこの本のテーマである。

とかくととてもややこしそうで難しそうな本に感じられるけど、とても刺激的で楽しく面白く、良質のSF小説を読むように一気にガーッと読んだ。

まぁとにかく乱暴に言えばムラ社会的全体主義社会とでもいおうか。ユートピアなんだかガンダーラなんだかわからないすばらしい世界だー

で、この三つのシステムが社会で滞りなく運営される前提として、人間の個が評価や感謝や貢献度といったパラメーターで任意に分割できるものとし、なおかつそれらのパラメーターがそれぞれ個や社会や組織といった世界の要員のすべてをまとめてビッグデーターとして一元的に安全公正でかつ絶対的に処理して集計することのできるコンピューターネットワークシステムの存在が想定されている。

コンピューターこそあらゆる不自由を強いられる人間の自由と開放の鍵だという信念に抱きつつコンピューター界隈に関わる私であるが、世界を統合するビッグ・ブラザーだとかマザーブレインだとかそういうものはすべからく全体主義で悪であるから、勇者を自認する者はこのシステムを仲間とともに叩き潰さねばならない。というゲームばかりで育ってきた世代としては、どうしてもこの本に書いてあるようなシステムを聞くと、どこがセキュリティーホールになるか、どうやってアタックするべきか、どこを叩けば効率的にシステム崩壊に導けるかというところをついつい考えてしまうww

最初は社会学の本だと思って読んでいたのにいきなりこんな感じに行列とか数列の総和がでてきてうへっ!となるが、

なめ敵

こういうところは証明なので正しさを数理的に検証しようと思わない限りすっ飛ばして読んでもまったく問題ない。

こういった証明が出てきたり、定価が3360円という価格設定から言えば、一般書というよりは学術書なのかもしれないが、読み物としてもとても読みやすい上に面白い。

この値段にひるまない方は是非買って読むと良いかもしれない。また面白くて一気にガーッと読めるタイプの本なので図書館で借りて読むのも良いかもしれないですぞ。

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