パンクも一日二回ではびっくりでござる / 雨に走れば / 自転車に乗ろう

昨日は夕方から雨らしいということを聞いていたので雨用自転車で出勤した。
以前から雨用自転車のタイヤのサイド部分がほつれて来ていて「そろそろタイヤ買い替えやなぁ」と思っていたのだが、出勤前に見たらほつれる程度だったものがすでに少し裂けており、ほとんど中のチューブが見えるくらいになっていた。
「これはやばいなぁ」と思いながらも、まぁ一日くらい大丈夫やろうと高をくくってその雨用マウンテンに乗っていったら、急激なブレーキング中に「ぷしゅー」と力の抜けるような音、案の定職場までの道半ばでパンクした。
あーやっぱりーとガックシしながら、道端でチューブ交換する。通学途中の女子中学生に胡散臭そうな目で見られ、集団登校の小学生の群れと暇そうなおばあちゃんにやいのやいの言われて慈愛の微笑を返しつつ心の中で「うるせー!!」と叫ぶ。
ロスタイム五分で職場までこぎつけ、帰りは帰り道の自転車屋さんで新しいタイヤを買って帰ろうと決心する。
そして仕事後、雨降る帰り道にまたしてもパンク、出勤時、もしくは帰宅時にパンクしたことはあるけど、行きと帰りの二回パンクしたのは始めてである。予備チューブがないので雨の中自転車を押しながらいつも行く自転車屋さんになんとか閉店間際に到着した。


私の雨用自転車は、フレームの前三角が白で後ろ三角が赤いマウンテンバイクである。
前のタイヤはこの間交換したばかりの「そんなに安いのか!」と驚いた白いタイヤだったので、後輪もこれと同じタイヤの後ろ半分のフレームの色に合わせた赤か、前タイヤの色に合わせた白にするつもりであった。
店主に「これと同じタイヤの白か赤をよこすのじゃ」と申し渡す。店主は「ははーっ」と在庫確認に奥に引っ込む。
そしてしばらく後に二本のタイヤを持って戻ってきた店主の手には白とピンクのタイヤが。店主曰く「あったのはこれだけ、赤は売り切れにござります」
本来なら赤タイヤ取り寄せてもらうところであるが、とにかく今日乗って帰るためにはタイヤが必要である。
このどちらかを選ばなければいけない。本来なら迷うことなく最初から選択肢に入っていた白を選ぶはずの私であるが、何かが私を一瞬押しとどめ口から出た言葉は「大儀である。ではピンクをいただこう」であった。
店主は半ば驚いた顔で「ピンクですか!?」と絶句する。「あなたのようなオッサンがピンクのタイヤの自転車にお乗りになるので?」とでも言いたそうな顔であるが、武士に二言はないとばかりに鷹揚に頷いてみせる。
そしてそのピンクのタイヤをチューブと一緒に購入し、お店の中を借りてタイヤ交換した後自転車に装着してみると、これはこれは意外にプリティである。
ただ、店主の噛み殺した問いのように、これに乗っているのがオッサンであるという点だけが問題である。しかしこればかりはどうしようもない。
しかし漕ぎ出だしてしばらく走っていると、土砂降りの雨の中を後輪でくるくる回っているピンクのタイヤが何かの拍子に視界に入る度に妙な可笑しさがこみ上げてくる。回転するピンクのタイヤとはねる水飛沫の光学的な美しさが目に沁みる。
疋田智によって街町乗り自転車が一つのの思想やライフスタイルとも言うべき位置にまで押し上げられて久しい。雨用、遠乗り用、街乗り用と三つの自転車を乗り分けている私もその思想やライフスタイルに大いに賛同するものである。
街で自転車に乗ることの楽しさと言うのは、非日常的な強烈な経験によってもたらされるものであるというよりも、日々の変化を肌で感じ、流れる景色と時間と人々の営みの間を通り抜ける、日常的でどこからともなく込み上げて来るような自然な楽しさである。大げさに言えば生きる事そのものの楽しさの延長線上にあるように思う。
今日も出勤時は酷い雨だったのだが、このピンクのタイヤのお陰で楽しく自転車に乗れた。
まぁ、しばらくすればこのピンクのタイヤも見慣れてなんとも思わなくなるかもしれないけど、それでも、久しぶりに自転車ってば楽しいなぁと思わせてくれたピンクのタイヤであった。
2000円しない安価さと、自転車全体を見違えさせてしまうインパクトをもったこのタイヤは、MTB街乗りパイロットの諸氏、はたまた26インチのママチャリライダーの皆様に、自転車の楽しさを教えてくれる逸品としておすすめである。





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