「銛ボーイ」 ミーツ 「樹海ガール」
まだポンプカップの話は続く…
先日のポンプカップを買った店で、人間がぶら下がっても大丈夫なカラビナや、氷の壁を登るための靴に取り付ける爪などを「ほへ~」っと口を半開きにしながらもの珍しげな目で眺めているところに一人のレディがやってきた。
98%興味本位の呆けた顔をしてカラフルなロープの値段にびっくり仰天していた私とはまったく対照的に、そのレディは真剣そのものの眼差しでロープを吟味している。
その眼は99%興味本位で、無駄にピッケルを手にとってしたり顔をしてみたり、カラビナをパッチんぱっちんさせていた私が、なにやらとたんに気恥ずかしくなってくるくらいの眼光を放っており、正にカラビナ一つ、ロープ一本に命をかける漢のオーラを放っている。
そのレディーをこっそり見るでもなく見ていると、最近ではあまり見なくなった登山系の物をベースにした服装で、とても良い感じであった。
全体的にアンデスの織物ちっくなカラーで統一されており、アンデスカラー(というのか?)のレギンスの上にハイテク素材なミニスカートをはき、コート代わりに巨大な織物を羽織ってごっつい目のブーツに本格的なザックにホンマモノのカラビナを装備している。
小物が隅々に至るまで本物である。なんというか個性的で素晴らしい服装である。これこそ自分を表現する服装やなぁと感心した。
世は「森ガール」なるものが満ち溢れているが、実際彼女たちなど森に行けば一瞬にして遭難して熊のおやつになるのがオチであろう。
そのアンデスレディーからすれば世の「森ガール」などせいぜい「林ガール」、「木ガール」、いやむしろ「草ガール」にしか見えないに違いない。
私に言わせればそのアンデスレディーこそ本当の「森ガール」である。「森ガール」すら生ぬるい「雪山ガール」でも「樹海ガール」でもありえるだろう。
服が好きな私であるが、果たして私の服は私を表現しているのだろうか?ふと考えて見ると微妙である。
たとえば最近、私は革のライダースジャケットをついつい幾つも買ってしまった。これは私の何を表現しているか?これで私の何を表現できるのだ?豚革、牛革、山羊革のライダースジャケットはいったい何を表しているのだ?
ぱっと頭に思い浮かぶのは「お肉好き?」位のものしかない。うむ。確かに私はお肉好きではあるが…それはわざわざ高い金を出して買った服で表現するものではないだろう…それにどちらかというと魚好きやし…
そう、魚である。そういえば私は海好きの魚好きの魚突き好きである。
「森ガール」に対抗して「海ボーイ」、いや「銛ボーイ」と言うのはどうだろう?
マリンルックをベースとして、ウェットスーツの肌触りとシルエットと銛の尖ったイメージに、フィンの柔らかいイメージも組み合わせるような感じである。
キャッチコピーは「クールで知的で何処と無く危険な香りを漂わせながらも、海と自然をこよなく愛する、少年の心を忘れない男性にこそ、銛ボーイ」どうであろうか?
広告代理店ででもボーンとやって、服屋さんと服雑誌の一つや二つででもボーンとやって、ついでにドラマの一つや二つもおまけにボーンとやれば、今年の夏くらいになればみんな「銛ボーイ」とか言ってるんじゃないだろうか?
しかし「銛ボーイ」と聞くと頭の中に自然と「未来少年コナン」が思い浮かぶことよりも何よりも、私がもうボーイとは気恥ずかしくてとても名乗れない事が一番の問題だな。