いつでも閉店セール/辞める辞める詐欺/真実は言葉に引っ張られる?
そういえば先日街中に焼肉を食べに行った時、「閉店セールなので特別お安くしてまーす!!」と異様なテンションと声量で絶叫しながら腕時計だとかベルトだとかアクセサリーを売っているお店があった。
そういえば、このお店はいつ前を通りかかっても「閉店セール」である。少なくとも何年か前に向かいの店でオムライスを食べながら「そんな言うほど安いか?」「働くって大変やー」と突っ込みながらその絶叫ぶりを眺めていた記憶がある。
仕事でも何でも、辞めるとか辞めたいとかやたらと口にする人に限って辞めることはほとんどなく、本当に辞めちゃう人はいきなりスパッと辞めてしまうことが多いような気がする。
そういった事を「辞める辞める詐欺」と言うこともあるようであるが、通用するのは最初の一度だけで、狼少年のように後は言い続ければ言い続けるだけその言動の重みが無くなってどんどん信用を失ってゆき、最後にはそういう人だとかそういう店だとか思われるところで定位して、結局「辞める辞める」と言っていた本人が望むような惜しまれて辞めるような辞め方ではなく、辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまいフェードアウトしてしまうようなことが多いように思う。
というわけで、これからはいつも辞めたい辞めたい言うてる人には「お前はいつでも閉店セールしてる店か!」と突っ込み、いつも閉店セールしてる店には「お前とこは年がら年中辞めたい言うてるサラリーマンか!」と突っ込むことにしよう。
ゲーム理論的には、生き残り戦略として最初は相手を信用して、次からは相手にされたように対応し、最後の一度だけ騙すのが無難でブレのない最強の戦略であるということになっているらしいけど、その戦略からすると、一度誰かを騙してしまうとそれからは相手からも信用されなくなり、結局ナッシュ均衡的に相手をだまし続けようとするしか取るべき戦略がなくなってしまい、結局そのゲームでは負けてしまうことが多いのである。
そういったゲーム理論的な見方からすれば、結局ずっと同じ場所で動かず同じ店で「閉店セール」をし続けるのは良い戦略であるはずがないであろうし、本当の意味で自らの店を閉店に追い込むことになるのではないかと。
しかし、この店が閉店に追い込まれずに、少なくとも数年、本来なら不利な戦略で戦い続けていられるのは、恐らくほとんどが一見さんの観光客ばかりを相手にしているから、常に「最後の一度」でかつ「最初の一度」でもある相手を、報復されるリスクなしにだまし続けることができるからなのであろう。
一般的に「閉店セール」という概念は「閉店(するから安くするよ)セール」と裏の意味が隠れていることを買う人が自動的に補完して理解しているわけであるが、結局いつも閉店セールをしているお店は当初「閉店(するつもりはないけど、そういうとお客が集まる)セール」という意図が隠れていることになる。
そして当初はそうだったはずが、結局いつの間にか「閉店(せざるを得ない状況に追い込まれてしまいました)セール」となってしまい、当初の本来の意図とは裏腹に、実際的な真実を語っていることになるような気もする。
なんというか、真実というのは「実際にどうあるか」ではなく、嘘だろうが本当だろうが口にした事や言葉の方に引っ張られてゆくように感じるのであった。
そういうわけで、とりあえず私は「おかねがあまってしょうがない。しあわせすぎてまいったなぁ。れきしにながのこってしまった。どうしよう。しんじつはわれとともにあり」と言っておこう。
皆さんもどうぞ。