風邪をひく、2日目、3日目/夜と霧/夢オチ

風邪を引いて早々に寝た翌日の土曜日、起きたら何もかもが治癒しているような淡い期待を抱いて目を覚ましたのだが、残念ながらそう都合よく行くわけはなく、症状は特に良くも悪くもなっていなかった。
仕事も休みだし特に用事も予定も何も無かったので、とりあえず寝ていようという事で、朝から晩まで死んだように丸一日寝ていた。
丸一日、起きたり寝たりを繰り返し、ちゃんと起きて目覚めたのはその次の日の日曜日の昼前であった。
人間寝ようと思えばいくらでも寝られる事に驚きつつ、風邪をひいて三日目の日曜日になると流石に風邪の症状は収まってきたが、そのかわりに微妙に頭が痛い。
しかし、この頭痛は風邪の症状というよりは寝すぎの時の状態に似ているような気がする。さらに腰まで痛いし、もうこれは単純に寝すぎである。
風邪は治ってきたけど、寝すぎで調子が狂ってきたので、結局差し引きゼロのような気がする。
どこかが直るとまた別のどこかのおかしい所が目立ってくるポンコツ車の気分である。
かといって、特に起きてすることも無いので、無難に寝ていた方がいいだろうと思ったのだが、一日寝ていたせいでぜんぜん眠れない。
ずっと布団で寝転んでいても暇なので、とりあえず音楽をかけて、読むつもりの本を積んである本の山の一番上から一冊取って布団で読み始めた。
特に意識せず選んだ本がヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』 の新訳版だった。
『夜と霧』といえばアウシュビッツに収容された心理学者がその収容所での体験と考察を述べたもので、『アンネの日記』に並ぶナチス強制収容所系文学のロングセラーであり名作である。
読み始めて直ぐにこれは風邪をひいて寝込んでいる時に読むような本じゃないと思ったが時既に遅し。とても面白いので読むのを止める事が出来なくなってしまった…


しかし、いくらなんでも風邪で臥せっている時に、ユダヤ人の心理学者が切々と語るナチス強制収容所の悲惨さや、アウシュビッツを包んでいた絶望の話を聞かされるのは余りにもヘビーすぎた。
アウシュビッツでは少しでも体調が悪かったりしんどそうなそぶりを見せると労働力として使えないと見なされてガス室に送られるというくだりを読みながら「あ~今の俺みたいに風邪くらいで寝込んでたら確実にガス室やなぁ…」等と思ったり、完膚なきまでに人間性を否定されて人格を粉々に打ち砕かれる様を読んでいるとどんどん気が滅入って来る。
妙に落ち込みながらも集中して一日かけて読み終え、気付いたら夜中であった。
流石に本を読み疲れたせいかちゃんと寝られたのだが、
アウシュビッツで看守に怒鳴られながら、雪の中を素足で大量のペットボトルを抱えてその中身を捨てに行く。という夢を見た…

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