全男性の代表としての、十字架上の土偶の弁明

仕事後に「忘年会のようなもの」に参加するために町に繰り出す。
街中を闊歩中に、ここ一年は会っていない中学時代からの友人から夏ぶりに電話がある。道端に立ち止まりしばらく話す。
色々なものが過ぎ去って通り過ぎて行った中で、彼は彼として依然としてそこに在る。
奴と話した事で限りなく「普遍」に近い何かしらを自分の中に見つける事が出来てとても力づけられる。おかげでこの時期特有の町一丸となった白痴のごとき精神攻撃をものともしなかった。
十字屋でゴールドベルグ変奏曲の弦楽三重奏のもの、クラシックギターのものを立て続けに試聴し、何かこみ上げて来るものを感じる。
こういう類のもので俺は出来ている事を激しく痛感し、どっぷり鼻の上まで音楽に浸りきる。
「そろそろつくよメール」の着信で我に返り、会場へと向かう。


土偶が梅酒ソーダーを一杯飲む間に、女性三人は焼酎で出来上がる。
無駄にゲラゲラ笑いまくり、第一幕の終了。
場所を移して第二幕、コーヒーを飲んでいたはずが、気がつけば「何故男はXXであるのか?」「男がXXするのは何故であるか?」式の質問を矢継ぎ早に射掛けられている。
不肖土偶は一般的男性の範疇から著しく離れているから俺の考えを言ったところで何の参考にもならんと前置きした上で、世界の全男性を代表して熟考に熟考を重ねて答えまくる。最大多数の男性の平均的な感覚だと思われる概念の説明をなるべく丁寧に試みる。
しかし、自分の感覚や考え方ではない事を、そういった感覚や考え方があるものだとして話をするのは一般論で逃げまくっているように感じられ居心地が悪い。
俺が答えれば答えるほど、彼女らの謎は深まるばかり、聴けば聴くほど混沌は深まるばかり。
酒の勢いを借りてヒートアップした弁舌は突如として限定された女性的立場からの、男性的でかつ動物的で衝動的で非論理的な物への強烈な攻撃に豹変する。
周りを見回せば、そこはビルの最上階の夜景の見えるカフェ。周りはカップルかイケてる紳士淑女ばかり。
そこで俺は全人類の原罪の贖罪として十字架にかかったキリストのように、全男性の代表として責め立てられ、アテナイの神でない神を信仰し、若者を堕落させたかどで公開裁判にかけられたソクラテスのように弁明を求められる。
答えられたとは思わないが、ベストは尽くした。理由がなく状況しかないものの理由を如何に答えられようか。脇腹にロンギヌスの槍を受け、毒人参の杯を乾した。エリ、エリ、レマ、サバクタニ。アスクレピオスに鶏を頼む。
酔いのすっかりさめた土偶はゴールドベルグ変奏曲を鼻歌で演奏しながら自転車で帰ってきた。
とちょっとクリスマスネタを織り交ぜて書いてみた。

2件のコメント

  • ぁぃゃぁ、ありがとうございます。
    そういっていただけるととても嬉しいであります。
    来年もこの芸風を磨いていきたいと思いますのでどうかよろしくお願いいたします。

  • >この時期特有の町一丸となった白痴のごとき精神攻撃をものともしなかった。
    たしかに‥
    いやぁおもしろく読みました。
    この文章は一つの芸風やな。^^

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