Bill Evansな日曜
Bill Evans 「His Last Concert in Germany」を聴いた。
この頃の彼は最悪の健康状態であり、ボロボロの体で医者にかかるのを拒みながらドラッグで気を張って演奏を続けていたようで、この録音のほぼ一ヵ月後、彼は演奏中に倒れてそのまま回復することなく死亡してしまった。
なんか遠まわしな自殺じゃね?という印象がするけど、こういう死に方は彼の望む所やったろうし、そういう死に方はピアニスト冥利に尽きるやろう。
彼の半身の如きベーシストのスコット・ラファロが事故でこの世を去り、離婚した彼の妻が地下鉄に飛び込み、アルバムを献呈した実兄が拳銃自殺したりといったことが起こる中で、彼の死に対する感覚は常人と異なっていったのかもしれないし、それは自分の体と命を粗末に扱い、ピアニストを貫き通した彼の生き様を作り出したのかもしれない。
マイルスやコルトレーンのように多くのミュージシャンが自己変革を重ねてそのスタイルを大きく変えていった中で、彼がそのスタイルを殆ど変えていないというのは有名な話である。
結局彼は「自分」だけを表現し「自分」だけを見つめ続けた音楽家であり、彼が絶大な人気を誇るのも、不完全で病的であるのを超越した彼の「自分」の魅力による物だろう。
彼が生涯変わることなく抱いていた感覚は「クールに感じなければ、知性的に捉えなければ、何よりもロマンチストとして見なければこんな世の中やっていけないや」と言うところだろう。
死の一ヶ月前の1980年に録音されたこのアルバムも、1960年代前半の録音も彼のスタイルはそれほど変わっていないし、彼のそんな無常観に近いトーンは確信的により研ぎ澄まされ、色濃く漂ってる死の予感とあいまって不思議な感動を覚える。
「命を燃やす演奏」と言う感じが伝わってくるし、こういう瞬間を自分で作り出すことが出来るなら一個の人間の命の価値など軽いものやという(恐らく彼が考えていたであろう)感覚が良くわかる。
最後の「Walts For Debby」が「Walts For Debby」に聞こえないけど、やっぱり「Walts For Debby」でBill Evansでしかありえんねんなと変に納得した。