暗い題名の曲ばかり集めたアルバムは如何なものかと。

小雨の中出勤し、小雨の中帰ってくる。
さすがに半袖では寒かった。
「昔聴いたスタンダードをもっかい聴き直してみよう期間」ということで、二十歳くらいの時に非常に良く聴いたMal Waldronの「ALL ALONE」を聴く。
アメリカを捨ててヨーロッパに渡り、やっとの事で現地のマイナーレーベルでレコーディングするチャンスを得たものの、当日トリオを組むはずのドラマーとベーシストが現れずにやむなくピアノソロで吹き込んだ、全て彼自身の作曲によるアルバム。
日本ではアホみたいに売れたようだ。
当時はともかくとして、このアルバムは今でもスタンダードな扱いなのか?


amazon ASIN-B0000568JSで、このアルバムはダウナーもダウナ、とてつもなく暗い。
孤高の孤独ではなく、夢も希望もあったもんじゃない打ちひしがれた庶民の不幸と言った感じ。
訥々としたピアノがたどたどしく聞こえ、なんかやたらと生々しい。
そうこれは津軽三味線と同じ音だ。「情念」と呼ぶに相応しい。
「A VIEW OF ST. LUCA」や「BLUE SUMMER」で芽生え始めた「明るい」とか「希望」みたいなトーンが展開するまもなく崩れ、気づけば全く別の黒いトーンになっている様は目眩を覚えるようだ。
こんなアドリブする奴は相当性格暗いと思うぞ。
しかし、こういう深い所に引き摺り込まれてゆくようなトーンは彼しか出せんやねと思う。
若い二十歳そこらの頃、このアルバムを聴いて、何かを表現する場合に、テクニカルでない事が逆に武器になる事を知ったような気になっていたのを懐かしく思い出した。
彼はピアニストであるけど、作曲家でもあると言う事を当時は意識してなかったけど、今更ながらに意識した。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。

PAGE TOP