モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 内田光子

このCDは世界的に実力者として有名な内田光子の出世作となったモーツァルトのピアノ協奏曲の全曲録音のひとつ。このシリーズ録音を機に内田光子は一気にブレイクしたらしい。
内田光子の出世作であると同時に、モーツァルト弾きの彼女にとっては代表作のひとつだろう。
この人がテレビ喋るのを初めて見た時は「音楽家っておかしな人種やなぁ…」と思ったけどやっぱり変ながらもとてつもない魅力のある人であり、その辺のビジュアル系クラシック演奏家と一味も二味も違う。
モーツァルトのピアノ協奏曲で短調であるものは、この間感想を書いた20番とこの24番の二つだけである。
Wikipediaで『多くの人がイメージするような「モーツァルトらしい」明るい曲ではなく、暗く情熱的な作品である。しばしば「ベートーヴェン的な」作品と言われる。』というように、20番同様この24番のハ短調も、モーツァルトらしい旋律と言うか音楽的な語彙も存分に含まれている、20番よりも深刻で内省的で情熱的でかつ個人的な曲であるように思う。


amazon ASIN-B0009N2VE6深刻で不安げなハ短調アレグロの第一楽章、弦楽器と管楽器で盛り上げておいてゆっくりと入るピアノソロが何ともたまらん。
第二楽章の変ホ長調のロンドがラルゲットに演奏される様は何とも内向的な広がりを感じる。妙な落ち着きと透明な孤独さというか諦念のようなものが漂っていて何とも心が洗われる。
第三楽章は一転してアレグレットなハ短調の変奏曲である。提示された主題が徐々に変奏されつつ高まって行く様はなんとも言いがたい感動を覚える。
モーツァルトの20番以降のピアノ協奏曲について言われる事やけど、モーツァルトがどこぞの貴族に「こんな感じでお願い」って依頼されて書いたのではなく、これは自分の書きたいように自分の思うままに自分が演奏する為に書いて作られた曲である。
前にどこかで書いたような気もするけど、この曲を聴いていると、ベートーヴェンがモーツァルトに繋がる系譜である事をとてもよく感じた。

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