マウリツィオ・ポリーニ 「ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集」
2007年11月21日
マウリツィオ・ポリーニの「ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集」を聴いた。
ミラノ生まれのポリーニの弾くピアノは技術的に完璧すぎて冷たいとかサイボーグとか言われることが多いらしい。
18歳でショパン国際ピアノコンクールで全員一致で優勝をした後、直ぐ演奏活動に入らずに10年近く勉強を続けたらしいというエピソードからも、彼は一般的なイタリア人のイメージにない真面目さと勤勉さを持っているような印象を受ける。
一方ベートーベンの28番から始まる後期ピアノソナタはベートーヴェン的、ドイツ的深刻さと重々しさを突き詰めた先にある音楽のような気がする。言うまでもなくイタリア的で連想されるものとは遠い位置に在る深刻で重い音楽であろう。
そして、そんなポリーニのキャラクターとベートーヴェンの後期ピアノソナタははとてもあっているように思えるのだ。
ポリーニがベートーヴェンのピアノソナタの全集録音を始めるにあたって一番最初に録音したのが、この重い重い最後のピアノソナタ群で、それがこのCDである。
確かにサイボーグ的で冷たいという見方もあるけど、個を捨てて演奏機械となることで譜面から伝わるベートーヴェンの息吹を最優先するという側面もあるような気がする。
全てを自分の音楽として弾くグレン・グールドとは全く逆の方向性やけど、「ベートーヴェンの音楽を聴く」という意味ではとても素晴らしいと思う。
何らかの感情が芸術として表現される場合には知的な制御が不可欠であるとする立場を突き詰めたような演奏であると思った。
それでいて、ラテン的な明るさも忘れていないところが最高に知的であると思った。
この音源はポリーニが33歳から35歳にかけて録音したものであると言うところも私のツボである。
確かにそうですね、
アラウが感情を感情のままに表現しようとしているような印象を受けるのに引き換え、
ポリーニは感情を知的なレベルで昇華しようとしているように感じられます。
そのあたりはベートーヴェンよりもショパンの演奏で顕著な気がします。
例えば、感情のままに演奏されるショパンは甘々でちょっと聞けたもんじゃないですが、
ポリーニのショパンは知的に制御されていてとても素晴らしく思えます。
私が「サイボーグ」と言ったのはむしろ褒め言葉のニュアンスなのですが、
そういう意味で「知的」と言う面ではポリーニに勝るピアニストはなかなかいないように思います。
サイボーグとは言うけれど、後期ベートーヴェンのソナタに感情を入れないで演奏できるはずはない。
ポリーニの場合、その感情自体が演奏とともに昇華されている。
彼のピアノの音は芳醇であり知的だ。
むしろアラウとは対照を成していると思う。
ベートーヴェンは古典派とロマン派の橋渡しとなった音楽家ということもあるせいか、
一般的に有名な彼の音楽はピアノソナタの8番や交響曲九番のようにロマン派的な聞き方をされることが多いような気がします。
一方で対位法やソナタ形式を突き詰めたというようなバリバリの古典派的な側面も多いわけで、古典派としてみるかロマン派としてみるかでまったく違うように見えるのではないでしょうか?
ロマン派として演奏されているのを聞くとちょっと辟易する気持ちもよくわかりますが、
古典派的な側面に着目して聞いていると、たかちゃんさんの仰る様な、バッハから脈々と受け継がれてきた、対位法を突き詰めることで研ぎ澄まされた音の造詣や構造の美しさが見えてくるように思います。
正直なところベートーヴェンの楽曲はどこか好きになれないところがあって、何故かポリーニの後期ピアノソナタ集とカルロス・クライバー指揮のものだけは例外なのでした。自分でも何故ってずっと考えてきて、最近はようやく割り切れました。ベートーヴェン、立派な人だと確かに思う、でも好きになれない。要は虫が好かないのです。….で、ポリーニの演奏は、情感にフィルターが掛けられ、人間臭さが除かれて、音の造形や構造が美しく抽出されている。僕には最高の演奏です!
私は楽器を弾ける人ではないので、「弾きたい!」という感覚は良くわからんのですが、大好きな曲を弾けたらさぞかし幸せだろうなと何時も思っております。
いいなーチェンバロっ奏者と
フルートのバッハソナタ吹きたいな!
私自身も言ってるだけで理解できているかどうかは微妙です…
ショパンはあんまりベタベタ過ぎてあまり聴く機会があまりなかったのですが、なるほどポリーニの演奏で聴くと良いかも知れませんねぇ。今度聞いてみます。
アルゲリッチはクレーメルと一緒に録音したベートーヴェンのヴァイオリンソナタを良く聴くのですが、なんとも言い難い緊張感を孕んだエネルギーで弾くチェンバロは良くはじけそうで面白そうですね。
ご回答ありがとう御座います。
とっても嬉しいですね。
わたしも
そう思います
(どこまで理解 出来ているかは
やや 自信ないですが…)
だから
ポリーニを聴く時は
通常
大袈裟な感情表現されていて
ベタベタした曲がどのようになるかを
楽しみながら聴こうと思ってますね。
でも
ショパンのエチュードは
ポリーニで、泣けました!
あれは、CHOPINの魅力って所かもしれないですね。
ショパンはすごいなぁ~
是非
ポリーニ演奏で
モーツァルト ピアノソナタ全集も出して欲しいなぁ~
別の意味で
マルタアルゲリッチに
あの情熱のままに
チェンバロを弾いてもらいたい!
サイボーグ・ポリーニですが、逆に言えば情感に訴えない演奏は感情的なものが少ない分、音楽に対する知的な解釈を要求するような気もします。
文学や映画などの他の芸術に比べて、クラシック音楽というのは愛好家でない人からはあまりに知的に解釈されることの少ない芸術だと思うのですが、ポリーニという人はそういう方向性を要求するような位置にある演奏家ではないか?と私は思っています。
ポリーニは
11番。12番。21番
のCDを買いましたが、
なんか
葬送ソナタ?の第一楽章で
泣ける私が
全然 泣けず
感情移入も出来なかったので
ポリーニのベートーヴェンには
あまり
良い感じを持っていなかったのですが
後期ソナタは
楽しめそうですね。
もちろん
ショパンのエチュードは
ポリーニ版が一番好きですよ。