小判の雨でも降ればよい
2007年11月22日
黒澤明の『どん底』を見た。
この映画はゴーゴリーの同名の戯曲が原作で、舞台を江戸時代の棟割り長屋に移したもの。様々な事情でこの長屋に流れ着いた最底辺の人々の人間模様が描かれる。
同監督の撮った「どですかでん」と同じようなテーマであるけど、「どですかでん」では各自各々の個性で貧乏と現実と苦しみと戦い、また逃避しているのに対して、この「どん底」では長屋一体となってそれらから逃避している。
集団で行われる現実逃避はもう楽しそうですらあり、それが極まったのがかの有名(らしい)な馬鹿囃子である。
出てくる役者が全員いい感じやけど、特にお遍路さんの役で出演している左卜全がなんともたまらん。
あと、駕籠かきの津軽が何気に気に入った。棒読みで発せられる「夜は、寝るだ!!」なんかかなりツボである。
黒澤明は棒読みの役者の使い方もうまいなぁと思った。
雨に打たれながら自転車に乗ってシュンとしながら家に帰り、黒澤明の『どん底』を見てどんよりし、パスカルが哲学者なる存在を手厳しく批判するのを読み、なんとも言えない気分のまま早々に眠りについた。やれやれだぜ。